フィデリティ証券は、世界有数の資産運用グループであるフィデリティ・インターナショナルの日本法人です。
投資信託を中心に、質の高い商品とサービスを提供してきた同社ですが、日本における個人向け証券ビジネスから撤退することを発表しました。
2025年1月1日をもって、個人投資家向けの証券総合口座(特定口座、一般口座、NISA口座)は、原則として全て楽天証券に移管される予定です。
本記事では、フィデリティ証券の会社概要やサービス内容、評判そして事業撤退の背景などについて詳しく解説します。
目次
フィデリティ証券とは?運営会社やサービス概要など
フィデリティ証券は、世界最大級の独立系資産運用グループであるフィデリティ・インターナショナルの日本法人です。
東京に本社を構え、主に個人投資家向けに投資信託を中心とした金融商品・サービスを提供してきました。
まずは、会社概要やサービス内容、そして口座の解約などについて詳しく見ていきましょう。
フィデリティ証券の会社概要
フィデリティ証券株式会社は、1998年に日本で事業を開始し、主に個人投資家向けに投資信託を中心とした金融商品・サービスを提供していました。
本社住所は東京都港区六本木7-7-7、資本金は約126億円(2023年5月26日現在)で、従業員数は148名。(2023年12月末現在)
世界で250万以上の顧客に投資に関するソリューションやサービス、退職関連のサービスを提供するフィデリティ・インターナショナルの一員です。
フィデリティ・インターナショナルは、米国ボストンに本拠を置く独立系資産運用グループであるフィデリティ・インベストメンツの国際投資部門として1966年に設立。
運用総資産額は、資産運用ソリューション・サービス事業と合わせて約69.9兆円(5,249億ドル)にのぼる、世界最大級の金融グループです。(2023年3月末現在。為替レートは133.090円で算出)
フィデリティ証券は、この強固なグローバルネットワークと、長年に渡って培われてきた豊富な運用ノウハウを背景に、日本の投資家へ質の高いサービスを提供しています。
サービス概要や手数料
すでに楽天証券への移管が決定していますが、フィデリティ証券のサービス概要や手数料体系を説明します。フィデリティ証券は、主に投資信託の販売に強みを持つ証券会社です。
フィデリティグループが運用するファンドを豊富に取り揃えている点が大きな特徴でしょう。世界各国の株式、債券、不動産などに投資する多彩な商品ラインナップから、投資目的やリスク許容度に合わせた商品を選択できる点が魅力といえます。
フィデリティ証券で取引できる商品は、国内外の投資信託と国内株式、ETF、ETN、REITです。NISA(少額投資非課税制度)やつみたてNISAにも対応しており、税制優遇を受けながら長期的な資産形成を目指すことも可能でしょう。
手数料体系については、取り扱うすべての投資信託は、購入時手数料が無料の「ノーロード」ファンドである点が特徴的です。購入時に手数料が掛からないため、初期投資の負担を抑えられます。
なお、信託報酬と呼ばれる運用管理費用はファンドごとに設定されており、保有期間中継続して発生します。信託報酬はファンドの運用成績に影響するため、商品選びの際には、購入時手数料だけでなく信託報酬の水準も確認することが大切です。
また、国内株式については、インターネット取引では残高や特典の有無に応じて1約定あたり0円〜1,500円(税込)、電話取引の場合は1約定あたり 一律10,000円(税込)の手数料が設定されています。
公式サイトにはポートフォリオの提示や分析が行えるツールも提供されています。
契約・解約方法
フィデリティ証券は、2025年1月1日をもって、顧客の証券口座を楽天証券へ移管する予定です。そのため、現在、フィデリティ証券では新規の口座開設申し込みを受け付けておりません。
これまでフィデリティ証券では、顧客からの申し出により「口座閉鎖依頼書」を提出することで口座解約が可能でした。しかし、2024年10月31日をもって口座閉鎖の受付は終了しています。
したがって、これから証券口座を閉鎖したい場合は、2025年1月1日以降に楽天証券へ口座が移管された後、楽天証券にて解約手続きを行う必要があります。
楽天証券での解約手続きの詳細については、楽天証券からの案内を確認するか、楽天証券のカスタマーサービスセンターへ問い合わせると良いでしょう。
フィデリティ証券の評判
フィデリティ証券の評判は、良い口コミと悪い口コミの両方が見られます。
良い口コミとしては、投資信託のラインナップの豊富さや、ノーロードファンド(購入時手数料無料)が多い点を評価する声が目立つようです。
一方、悪い口コミとしては、投資信託以外の商品が少ないことが不満として挙げられています。良い口コミと悪い口コミをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
良い口コミ|品揃えが豊富など
フィデリティ証券に対する良い口コミとしては、投資信託の品揃えの豊富さと、ノーロードファンドの充実を評価する声が多く見られます。
購入時手数料が無料。NISAにも対応しており、投資信託をメインに長期的な資産運用を考えている投資家から高い支持を得ているようです。
歴史を持つ世界有数の資産運用グループであるフィデリティの日本法人という安心感があるとの口コミも多く、その信頼性の高さが窺えます。
会社の歴史や規模、グローバルなネットワークへの信頼感が、安心感に繋がっているようです。
さらに、提供されているツールの使いやすさに関する高評価も目立ちます。
サイトのデザインが見やすい、操作も直感的で分かりやすい、さらには資産形成ツールが使いやすいといった意見が多く、Webからの操作にもストレスを感じさせていないようです。
悪い口コミ|選択肢が少ないなど
フィデリティ証券に対する悪い口コミとしては、投資信託以外の金融商品の選択肢が少ないとの意見が散見されます。個別株投資を積極的に行いたい投資家からは、信用取引に非対応の点や、外国株の取り扱いが無い点は、不満と感じてもおかしくはないでしょう。
フィデリティ証券は投資信託に強みを持つ一方で、その他の金融商品に関しては、大手ネット証券と比較すると見劣りする部分があるようです。
また、NISA(少額投資非課税制度)の対象商品が少ない点も、ネガティブな口コミとして挙げられています。大手ネット証券と比べると、NISAで買える商品のラインナップが少ないといった意見が見られ、NISAを活用して資産形成を行いたいと考えている投資家にとっては不満要素となっているようです。
さらに、国内株式の取引手数料が割高という指摘もあります。フィデリティ証券では1約定あたりの手数料額が一律であるため、少額取引を行う場合、「他のネット証券ならもっと安い手数料で取引できる」と考える人もいるようです。
フィデリティ証券の特徴
続いて、フィデリティ証券の特徴を解説します。口コミの項でも出てきましたが、フィデリティ証券には、投資信託の強みと世界最大級の運用グループというブランドがあります。
一方で、品揃えについては国内の大手ネット証券と比較すると見劣りするようです。フィデリティ証券のメリットとデメリットを詳しく見てみましょう。
メリット|高品質な投資信託など
フィデリティ証券の最大のメリットは、何と言っても世界有数の資産運用機関であるフィデリティ・インターナショナルのグループ力を活かした、質の高い投資信託のラインナップです。
長い歴史を持つフィデリティグループが運用するファンドを、日本で手軽に購入できる点は、大きな強みと言えるでしょう。
また、取り扱う投資信託の全てが、購入時手数料が無料の「ノーロード」ファンドであることも、大きなメリットです。
購入時のコストを抑えられるため、長期的な資産形成を目指す積立投資との相性が良く、少額からでも気軽に投資を始められます。
さらに、使いやすい取引ツールもメリットの一つです。シンプルで分かりやすいデザインのWebサイトは、初心者でも直感的に操作でき、ストレスなく取引や情報収集を行えます。
デメリット|投資信託以外が限定的など
フィデリティ証券のデメリットとしては、投資信託以外の金融商品の取り扱いが限定的である点が挙げられます。
国内株式は現物取引のみで、外国株式の取り扱いはありません。幅広い金融商品への投資を希望するアクティブな投資家にとっては、物足り無さを感じるでしょう。
また、NISA(少額投資非課税制度)や、つみたてNISAで投資可能な商品の選択肢が、大手ネット証券と比較して限られていることもデメリットです。
さらに、国内株式の取引手数料が割高な点も挙げられます。業界最低水準の手数料を提供するネット証券と比較すると、手数料の負担が重くのしかかることになるでしょう。
そして、最大のデメリットは、日本における証券ビジネスから撤退し、事業を他社へ譲渡することになった点です。この点については、最後の項で詳しく解説します。
フィデリティ証券を比較
すでにフィデリティ証券は、国内の個人投資家向け事業からの撤退を発表していますので、利用していた人は別の証券会社を使う必要があるでしょう。
ここからは、フィデリティ証券との比較対象として、国内大手ネット証券会社を3社紹介します。
トップクラスの口座数を誇る「楽天証券」
楽天証券は、国内最大級のインターネット・ショッピングモール「楽天市場」などを運営する楽天グループの一員であり、ネット証券業界でトップクラスの口座数を誇る証券会社です。
幅広い金融商品を取り扱っており、国内株式、外国株式、投資信託、債券、FXなど、多様な資産への投資が可能です。また、NISAやつみたてNISA、iDeCoにも対応しており、税制優遇を受けながら資産形成を行えます。
そして、楽天証券はフィデリティ証券の事業譲渡先でもあります。フィデリティ証券に口座を持つ顧客の証券口座は、2025年1月1日をもって楽天証券に移管される予定です。
楽天証券の大きな特徴として、楽天グループの強みを活かしたポイントサービスが挙げられます。
楽天市場などでの買い物で貯めた「楽天ポイント」を、投資信託や国内株式(現物)の購入に利用できるほか、投資信託の保有残高に応じてポイントを貯めることも可能です。
ネット証券最大手「SBI証券」
SBI証券は、SBIグループの一員であり、ネット証券の最大手として業界をリードする存在です。
幅広い金融商品を取り扱っており、国内株式、外国株式、投資信託、債券、FX、先物・オプション、CFDなど、あらゆる投資家のニーズに応えるラインナップを誇ります。
NISAやつみたてNISA、iDeCoにも対応し、税制優遇メリットを活用した資産形成もサポート。手数料体系は業界最低水準を打ち出しており、国内株式の取引手数料は無料となるプランも用意されています。
また、投資信託のラインナップも豊富で、原則としてノーロードです。
さらに、投資情報サービスも充実しており、独自のマーケットレポートやアナリストレポート、投資セミナーなどを通じて、投資判断に役立つ情報を提供しています。
様々な金融商品に積極的に投資したい人や、コストを抑えて取引したい人、高品質な投資情報を参考にしたい人にとって、有力な選択肢となるでしょう。
ネット証券のパイオニア「松井証券」
松井証券は、1918年創業の老舗証券会社であり、インターネット取引にもいち早く参入した、業界のパイオニア的存在。国内株式、米国株式、投資信託、先物・オプションなど幅広い金融商品を取り扱っており、NISAやつみたてNISAにも対応しています。
松井証券の大きな特徴は、国内株式の取引手数料の体系にあります。1日の約定代金合計が50万円までなら手数料が無料となるプランが用意されており、これは業界でも優れた水準です。
そのため、少額で取引を行う個人投資家や、デイトレードなど短期売買を頻繁に行う投資家から高い支持を得ています。さらに25歳以下の投資家は、約定代金に関わらず手数料が無料で、若者世代に対するサービスも充実。
取引ツールの使いやすさも特徴で、初心者にも使いやすいスマートフォンアプリから、信用取引を多用するヘビーユーザーにも評価の高い高機能トレーディングツール「ネットストック・ハイスピード」など多種取り揃えています。
フィデリティ証券が撤退。楽天証券へ移管か
フィデリティ証券は、日本における事業戦略を見直した結果、個人向け証券ビジネスから撤退することを発表。 これに伴い、フィデリティ証券が取り扱う個人向けの証券総合口座(特定口座、一般口座、NISA口座)は、原則として2025年1月1日に楽天証券へと移管される予定です。
今後は、外資系運用会社として高い評価を得ているフィデリティ投信を通じ、投資信託や確定拠出年金向けファンドの提供など、資産運用業に経営資源を集中させていく方針。
今回の事業撤退と証券口座の移管は、フィデリティ証券の顧客にとっては大きな変化であり、少なからず影響が生じることは避けられません。楽天証券への移管に伴い取引方法や資産管理方法は変更となり、フィデリティ証券でこれまで利用してきたサービスやツールも利用できなくなります。
証券会社を選ぶ際には、提供されるサービスや手数料だけでなく、事業の継続性も重要な判断基準となることを改めて示す事例と言えるでしょう。
とくに、外資系証券会社の場合、日本市場における戦略変更によって、事業撤退やサービス内容の大幅な変更が行われるリスクがあることも認識しておく必要があります。
『フィデリティ証券』の口コミ
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匿名