G&G、スイスプライベートバンク、GMB、MRIインターナショナル、エンジェルファンド・ネットワーク、JPB、各種オーナー商法、大和都市管財、ジーオー・グループなどなど…。
手を変え、品を変え、さまざまな金融詐欺が現れては消えていきました。
今も、この手の詐欺事件はなくなりません。
それは、騙される人が後を絶たないからです。
それにしても、なぜこれらの会社名を聞いた時点で、「怪しい」と思わないのでしょうか?
いずれも、もっともらしい社名をつけてはいますが、日本の金融機関や資産運用会社として登録もされていなければ、認可も受けていない会社ばかりです。
そうであるにも関わらず、それなりの額のお金を預けてしまうのです。
怪しい金融業者は「広告塔=著名人」を利用して信用力アップを企む
金融詐欺を行っている隠れ業者を「怪しい」と思わない理由はいくつか想像できます。
第一に、個人がまだまだ投資慣れをしていないことです。
決して日本の個人の金融リテラシーが低いとは思わないのですが、多くの方が付き合っている金融機関は銀行が中心なので、投資商品のリスクや、その見極め方、各種投資商品を提供している金融機関にはどういうところがあり、それらがどういう許認可を得て商売を行っているのかについて、今一歩、知識が追い付いていないところがあります。
第二に、これが今回の本題でもあるのですが、敵もさるもので、自分たちの信用力が低い部分を補完するための手段を講じてきます。
それは広告塔の存在です。
広告塔とは、企業やブランドの宣伝を目的とした存在、人物を指します。
過去、金融詐欺で広告塔に使われたケースをいくつか紹介しましょう。
まずG&Gは商品宣伝用のチラシに女性タレントを起用して、同社社長との対談を掲載しました。
この女性タレントは当時のJリーグ選手の妻で、プラチナ夫婦アワードを受賞したりもしていました。
一時期、和牛オーナー商法といって、出資金を募って和牛を買い付け、飼育して成牛になったら売却して利益を得るという投資がブームになりましたが、このときは人気テレビ番組だった「料理の鉄人」に登場して人気を博していたシェフが、その肉質の良さ、和牛オーナー商法の魅力などを、パンフレットや雑誌などで説いていたことを記憶しています。
MRIインターナショナルは、顧客向け情報誌を定期的に刊行しており、その表紙と対談に、日本人宇宙飛行士やアルピニスト、女優、歌舞伎役者などが起用されていました。
2019年に事件化したテキシアジャパンホールディングスは、その首謀者が元防衛大臣と宴会しているツーショット写真を利用して、出資者を募っていました。
コロナ禍の最中に事件化したエクシアは、その顧問に錚々たる人物が名前を連ねていました。
エクシアの顧問として公表された人物をざっと並べると世界銀行駐日特別顧問、テレビで活躍している某有名弁護士、金融庁のOBもいました。
情報商材系でも詐欺として微妙なケースあり
昔は、この手の金融詐欺の広告塔といえば、タレントやスポーツ選手が中心でした。
ここに挙げたのはあくまでも一例に過ぎず、実際にはもっと大勢の広告塔が存在しています。
近年でも、投資の専門家でメディアなどによく登場しているような人たちが、さもSNSで会員を募り、「投資の指南をします」といったような体の詐欺が横行していましたが、これだって犯罪を仕組んだ連中が、少しでも怪しまれないように仕掛けた罠のひとつです。
情報商材系でも、詐欺ギリギリのケースがあります。
情報商材とは、「海外のヘッジファンドなどで活躍し、非常に高いパフォーマンスを上げてきた伝説的ファンドマネジャーの投資情報をお教えします。ただし、その情報を得るためには会員登録したうえで、会費を30万円支払っていただきます」といった類のものです。
これが詐欺かというと、なかなか微妙なところがあって、この手の業者は「投資助言・代理業」のライセンスを取得していたりします。
そのため、表向きは正しい対価を受け取って、顧客に投資情報を提供していることになり、詐欺と断じることはできないのですが、問題は「海外の投資ファンドなどで活躍し、非常に高いパフォーマンスを上げてきた伝説的ファンドマネジャー」という下りに疑義があることです。
実際にあったケースで申し上げると、「黄金ファンド・ジパング」という情報商材がありました。
伝説的ファンドマネジャーとは、かつて友人から預かった1億円を中東の怪しい投資話に投じて失い、裁判沙汰になった人物です。
裁判所は、その人物に1億円の弁済する判決を下しましたが、その途端、自分が代表を務めていた会社と彼自身が自己破産したという話です。
そのようなドス黒い人物が情報提供者として祭り上げられている情報商材が、「黄金ファンド・ジパング」でした。
ちなみにその人物は、本や雑誌、その他のメディアでも頻繁に登場していたため、ある程度の知名度があると思われます。
実際、その情報商材を購入した人たちが、どの程度のリターンを享受できたのかは、定かでありませんが、そもそも怪しい投資話に巻き込まれて1億円を失っただけでなく、自己破産して保身を図ったような人物が情報提供者になっている情報商材など、絶対に信用できません。
ちなみにこの人物、前出のエクシアが定期的に開催していた投資セミナーの常連講師でもありました。
類は友を呼ぶというやつでしょうか…。
広告審査基準がほほないインターネット広告で金融詐欺商品が広く拡散される
もうひとつ、広告塔の絡みではメディアが利用されます。
最近はだいぶ数が減りましたが、かつては多くの出版社がマネー雑誌を発刊していました。
こうした雑誌に商品の広告を掲載しようとするのです。
当然、誰にでも知られているメディアに広告が掲載されれば、「広告審査基準を通ったのだから大丈夫だろう」というように受け止める人も出てくるでしょう。
なかには、全国紙に堂々と広告を掲載した金融詐欺商品もありました。
とはいえ、それでもまだ広告審査基準が設けられているマスメディアであれば、怪しい会社からの広告出稿を跳ねのけられるケースもありますが、近年の問題点は、広告審査基準などほとんどないSNSを通じて、インターネット広告が広く拡散されるおそれがあることです。
SNS投資詐欺などは、まさにその典型的なケースといってもよいでしょう。
最近はプラットフォーム側でもある程度の審査基準を設け始めたような話も聞きますが、インターネットを介して流れてくる膨大な量の情報から、事の真偽を見極めて広告掲載の可否を判断するなどというのは、不可能に近い話です。
そうなると、最終的な判断は情報の受け手にすべて委ねられます。
つまり皆さんが、自分自身で詐欺なのか、そうではないのかを判断しなければならないのです。
ライセンスを取得していない金融事業者とは付き合わないことが大事
では、どうすれば判断できるのでしょうか。
大前提として、ライセンスを取得していない金融事業者以外とは付き合わないことです。
銀行を通じて預ける預貯金、証券会社を介して売買する株式、債券、投資信託、国内FX会社が提供するFX(外国為替証拠金取引)、国内ライセンスを取得している暗号資産取引所や販売所から大きく外れるような商品、取引に関しては、シャットアウトするのが無難です。
ただ、それでも詐欺を目論む連中は、海外プライベートバンクやヘッジファンドなど、「国内ライセンスはないけれども、海外ではれっきとした金融事業者」といった体で近づいてきます。
この手の判断がつきにくいものについては、金融庁や消費者センターに問い合わせれば、怪しいか怪しくないかの判断がある程度までつくでしょう。
それに加えて、業者名をインターネットで検索すれば、噂されていることなどが挙がってくることもあります。
金融リテラシーも大事ですが、これからは情報リテラシーを鍛えることも、騙されないためには必要になってくるのです。
■監修&執筆:鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)
岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て2004年に独立。投資信託、資産運用を中心に原稿を執筆するのとともに、単行本の企画、ライティングも行う。
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