初心者が株式投資をする場合、基本的には長期保有がおすすめです。
短期投資に比べて精神的なストレスを軽減できますし、企業の成長による利益を売却益や配当益としてじっくりと享受することができます。
この記事では、株の長期保有のメリットやデメリット、長期保有に向いている注目銘柄、長期保有における成功&失敗の実体験を紹介するほか、長期保有の心得を徹底解説します。
株の長期保有とは?保有の仕方で投資手法は違う
まずは、株の投資・保有の方法と、長期投資が向いている人について解説します。
株の長期保有とは?
株式投資には、短期・中期で売買する投資(デイトレード・スイングトレード)と、数年単位で株を長期保有するケースがあります。
デイトレード | ・1日の間に売買を行う ・翌日に持ち越さない |
スイングトレード | ・数日~数ヵ月単位で売買を行う |
長期保有 | ・数年~数十年単位で途中で 売買することなく 株式を保有し続ける |
デイトレードやスイングトレードは、日々株価の動きを気にする必要があります。
株式市場が動く日中に株価や経済ニュースを見るのが難しい人にとっては、デイトレードやスイングトレードはストレスに感じやすい手法といえます。
一方、株を長期保有をする場合は、日々の値動きに振り回されずに投資をすることができます。
株の長期保有で投資するのに向いている人は3タイプ
ここでは、株の長期保有が向いている人を3つのタイプに分けて解説します。
1.いつも株式市場を見てられない!毎日仕事や家事に忙しい人
数年~数十年単位で株価が上がりそうな株に長期投資をする場合、日々の値動きを気にしなくてもよいのが魅力です。
最初にどの株を保有するかを決めるか利益確定や損切りのラインを決めれば、あとは手間がかからないので、仕事や家事に忙しい人にピッタリです。
2.大儲けしたいわけじゃない!安定して資産を増やしたい人
株の長期保有は、安定して資産を増やしたい人にピッタリです。
短期的に大きく株価が動く銘柄でトレードすると大きな利益を取れる可能性はありますが、このような株は価格が下落するときの値動きも大きく損失を被る可能性もありハイリスクともいえます。
一方、今後市場の需要が増えそうな将来性のある企業に投資をすれば、株価はじっくり上がり、利益を得られる可能性があるでしょう。
特に、プライム市場に上場する大企業の株価は急激に上がること(短期間で株価が10倍になるなど)はありませんが、安定的に資産を増やしたい人にはおすすめです。
3.老後資金や教育資金など、遠い将来に向けて必要な資金を作りたい人
株の長期保有は、老後資金や子どもの教育資金など将来に向けて数年~数十年単位で必要な資金を作りたい人に向いています。
株式投資において元本割れのリスクは避けられませんが、老後資産や子どもの教育資金はなるべく減らしたくないものです。
新興企業や値動きが激しいハイリスク・ハイリターンの銘柄より、安定的に成長している企業や、すでに市場の需要があり今後も成長が見込まれる企業の銘柄などに長期投資するのをおすすめします。
株の長期保有による4つのメリット&魅力
ここでは、株を長期保有することで得られる4つのメリット&魅力をご紹介します。
1.長期にわたり定期で配当&株主優待の恩恵を受けられる
株式投資をすると、企業からの配当や株主優待を受け取れるケースがあります。
・配当:企業が事業により得た利益の一部を株主へ現金で分配すること
・株主優待:企業が株主に対して、自社の製品やサービス、割引券などを贈る日本特有の制度
配当や株主優待は毎年(場合によっては年2回)受け取れるので、長期保有をすればするほどそのメリットを感じることができるでしょう。
2.配当を獲得→再投資による株資産の増加
投資している企業から得た配当を再投資することで、さらに資産を増やせる可能性があります。
最近は、ネット証券で気軽に単元未満株(1株単位の株式)の購入ができるので、少ない金額でも再投資しやすくなりました。
配当を活用して再投資をすることで、元本だけの投資を続けるより、効果的に資産を増やすことが可能になります。
3.売買手数料と税金などのコスト軽減
長期保有の魅力は、売買手数料や税金などのコストを軽減できることも挙げられます。
証券会社にもよりますが、株式の売買には手数料がかかります。
株式の売買を繰り返せば手数料の負担も大きくなりますが、長期保有で売買の回数が減れば手数料を減らすことができます。
また、一般口座や特定口座を利用する場合、利益に対して税金がかかるので利益が大きくなるほど税金の負担も大きくなります。
NISA口座で株の長期保有をすれば、利益に対する税金がかからないのでおすすめです。
4.日々の株価の動向に惑わされるノーストレスで投資に臨める
株価は自社の業績などだけではなく、国内外の経済や政治の影響を受けやすいです。
さまざまな要因で日々動く株価に一喜一憂しているとストレスが溜まってしまいます。
しかし、長期保有を前提に、10年先・20年先の株価を目標にして保有すれば、日々の株価の動きは誤差として受け入れられるようになります。
投資によるストレスを感じたくない場合は、株の長期保有をおすすめします。
株の長期保有の4つのデメリット&注意点
株の長期保有には、メリットだけではなくデメリットもあります。
ここでは、株を長期保有する際の4つのデメリット&注意点をご紹介します。
1.企業の業績悪化や不祥事による影響を受けると株価は下がるケースが多い
企業の業績悪化や不祥事の影響を受けて株価が大幅に下がるケースもあります。
ここで注意したいのは、株価の下落が一時的なものなのかどうかです。
例えば、企業の大きな不祥事が明るみになり経営が立ち行かなくなれば、どんなに大企業であっても株価は下落する一方になってしまうこともあります。
企業の業績悪化や不祥事が発生したときには将来株価が戻ることに期待して保有し続けるべきか、損失を被っても売却したほうがよいかを考える必要があります。
2.相場全体が低迷したときに対応できる投資手法が限られる
株価が下がるのは、企業の業績や将来性が不安定なときだけではありません。
企業の決算状況などが絶好調でも、経済や政治に対する不安要因があり先行きが不透明になると、相場全体が低迷してしまうこともあります。
市場全体が低迷するときは、どの企業の株式に投資していても株価が下がってしまう傾向にあります。
特に長期保有を前提としている場合は、損失を数年単位で抱える可能性があり、ストレスを感じてしまうこともあります。
編集部のひと言①:相場全体が低迷しているときは下手に動かない
どんなに優秀なエコノミストやアナリストでも、株価の動きをピッタリ当てることはできません。
ましてや、投資初心者が株価の動きを正確に読むことは不可能に近いといってよいでしょう。
相場全体が下落しているときは、別の銘柄に乗り換えて投資しても損失が大きくなってしまう可能性があります。
株価の下落が続きそうだと判断したら、いったん現金化してしまうのもひとつの方法です。
また、企業の将来性に問題なさそうな場合は、値上がりのタイミングを逃さないためにも損失を抱えてもそのまま持ち続けるのもひとつの選択肢です。
3.株を長期保有することで投資資金の流動性が低下する
株を長期保有しようとすると、投資資金の流動性が低下してしまうのもデメリットです。
例えば、長期保有によって資金が株に固定されることで、他に投資に回せる余裕資金がなくなれば、他の有望な投資機会を逃してしまうリスクもあります。
また、急な資金需要が発生した場合には、保有株を売却するタイミングによって損失を被る可能性もあります。
市場が不安定な局面では、株価が一時的に下落していることもあり、望まない価格で売却せざるを得ない状況に陥ることも考えられます。
4.株を長期保有するには忍耐力や徹底した自己管理が必要
株を長期保有するには、忍耐力や徹底した自己管理が必要です。
例えば、株価が上がりある程度の利益が出ると、株を売却して、例えばお買い物や旅行などに使いたい気持ちが出てくるケースもあるでしょう。
逆に株価が下がってしまうと、「なぜこの株を購入してしまったのか…」「他の銘柄を購入すればよかった…」といったようにストレスが溜まります。
感情に流されず、利益確定や損切りのルールを決めた上で投資をするのが大切です。
長期保有で成功する&リスクを抑えるための5つのポイント
ここでは、株の長期保有を成功させるためのポイントを5つご紹介します。
1.タイプの異なる複数の銘柄を購入してポートフォリオの充実化&見直し
株の長期保有をする場合、できるだけ複数の銘柄を保有することをおすすめします。
複数の銘柄を保有することで、値下がりリスクの分散ができるからです。
例えば3つの銘柄に投資をするとした場合、銘柄A社で損失が100万円できたとしても、銘柄B社で50万円、銘柄C社150万円の利益が出ればトータルの利益は100万円になります。
現段階で業績が安定していて将来性があると感じる企業でも、将来は何が起こるかわからないので、銘柄の分散投資をおすすめします。
2.インカムゲインの獲得戦略を立てる
株の長期保有を行うことにより、配当のインカムゲインが定期的に獲得できます。
まとまった金額で配当利回りの高い銘柄を選んで投資すれば、年間で十数万~数十万円もの配当収入も可能となります。
どの銘柄から配当を受け取るか、配当利回りはどれくらいを目指すか、受け取る配当総額の年間目標などを決めるとよいでしょう。
3.定期的に保有する銘柄(企業)の業績と財務を徹底チェック
株の長期保有を前提にしていても、定期的に保有する銘柄の企業の業績や財務状況をチェックすることをおすすめします。
投資を始める段階では、企業の業績も財務状況が優良でも、時間が経つにつれ状況が変わる可能性があるからです。
4.市場トレンドの分析を怠らない
株の長期投資では、国内外の経済・政治の動向に関する情報を入手し、市場トレンドの分析を怠らないことも大切です。
市場の低迷は、株価の下落から経済の不透明感による不景気に突入すれば、数年間にわたり続く可能性もあります。
株価の下落が当面続きそうだと判断したら、損切りして現金化してしまうのもひとつの方法です。
5.損切りルールの設定と実行
株の長期投資では損失を抱えていても、将来性に期待できると判断すれば保有し続けるのが基本です。
しかし、市場の需要の低迷や不祥事など今後も株価が上がらないと判断する場合は、自らがあらかじめ決めておいたルールのもと、損切りをしたほうがよいケースもあります。
編集部のひと言②:株価は絶対に上がるわけではない
ほとんどの上場企業は、将来にわたって継続すること(ゴーイングコンサーン)を前提に企業活動をしています。
株価は企業価値の算出に使われたり、安定的な企業の証と考えたりするため、企業は好決算を出すなどして株価を上げようとしています。
しかし、市場での需要が減ったり、競合の企業が台頭したりして、一度史上最高値をつけた株価を何年~何十年も更新できていないケースも多々あります。
自分の判断を過信しすぎず、企業の状況をしっかり確認した上で、今後も経営が厳しそうな場合は損切りを選択することも大切です。
長期保有に向いている注目の株式9銘柄
ここでは、長期保有に向いている注目の株式9銘柄をご紹介します。
あくまでも銘柄選びの参考材料としてご覧いただければと思います。
安定した高配当または増配を提供する3銘柄
配当を目当てに株式投資をする場合、高配当・増配を提供する企業への投資がポイントになります。
数年にわたって継続的に配当収入を希望する場合、過去の配当実績の確認もしましょう。
また、高水準の配当が続くかは企業の業績が堅調である必要があるため、その点のチェックもする必要があります。
海運で国内首位の会社。2025年3月期の年間配当金額は1株あたり325円で、2026年3月期は235円(2025年8月19日時点の配当利回りは4.53%)を予想しています。
粗鋼生産量で国内首位、世界4位の会社。2025年3月期の年間配当金額は1株あたり160円で、2026年3月期は120円(2025年8月19日時点の配当利回りは3.96%)を予想しています。
たばこ事業をはじめ食品・医療品業を展開する会社。2024年12月期の年間配当金額は1株あたり194円で、2025年12月期は208円(2025年8月19日時点の配当利回りは4.39%)を予想しています。
今後成長が期待される3銘柄
将来的に需要が増えることが期待される成長企業の株式に投資することで、株価が上がり、売却益を得られる可能性があります。
インターネットインフラ・金融など上場子会社9社を持つ会社。直近の決算は好調に推移しており、今期もインターネットインフラ事業を中心に増収増益を見込んでいます。
日系最大級の総合コンサル会社。DXやデジタルトランスフォーメーションに強みを持ちます。2026年2月期は増収増益を見込んでいます。
動画配信サービス「U-NEXT」をはじめとした多様なエンターテインメントおよびIT関連事業を展開する企業の持株会社。2025年8月期の決算は売上高前年度比10.2%増の増収増益を見込んでいます。
ブランド力&人気のある3銘柄
食品・飲料品・日用品・外食チェーンなどブランド力が高く、多くの人が日ごろから利用する商品・サービスを提供している企業への投資もひとつの選択肢です。
一定数の需要があることで売上が下がりにくく、安定的な経営に期待ができるからです。
調味料最大手で海外でも展開。業績は安定的に推移中。100株以上を半年以上保有すると、株主優待として自社商品がもらえます。
ビール・飲料メーカー大手。国内だけではなく海外でも需要が広がり業績は好調に推移しています。
ファミレス最大手。コロナによる影響を受けたものの、2024年12月期は売上高最高。国内外の出店やM&Aで今期も増収増益を見込んでいます。株主優待として100株以上で2,000円分の電子チケットがもらえます。
※銘柄リンク:Yahoo!ファイナンス
【成功&失敗体験談】から学ぶ株の長期保有の極意
ここでは、実際に株の長期保有をした3名の成功・失敗体験談をご紹介します。
ぜひ、これらの事例を長期保有する株の選定などの参考に役立ててください。
1.【成功】商社株を12年保有して株価は7倍に!(50代男性・会社員)
12年前に株式銘柄を物色していたところ、商社株があまりにも割安すぎて配当利回りが高すぎるのではと思いました。
5大総合商社株の中から気に入った銘柄を買おうと考え調べた結果、資源エネルギー系に強いA社株が面白いんじゃないかと思い300株購入し、長期保有のスタンスで臨みました。
しばらくしたら株式市場による商社株の見直し買いが入るようになり、徐々に株価は上昇していきました。
極めつけはウォーレン・バフェット氏による日本の商社株買いの表明です。これでA社株は急上昇し、現在は約7倍にまで増やせています。
A社株は高配当を着実に受け取れる「資産株」として位置づけているので、今後も売却する予定はないですね。
2.【失敗】電力株を8年保有したが株価は5分の1に低下…(40歳女性・会社員)
私は配当狙いで株を長期保有する戦略で投資をしていました。
そんな中で電力株は私のニーズを叶えてくれる銘柄だと考え、電力株の中でもB社株を500株まで買い増しを続け、年2回多額の配当を受け取って満足していました。
しかし、2011年に東日本大震災が発生したことで、電力株の株価は軒並み大幅下落したのです。
最終的にB社株も、株価が購入時の5分の1までになってしまい無配に…。泣く泣く損切りを余儀なくされました。
「想定外のことで株が大きく下がることがある」ことを身をもって体験でき、今となっては良い勉強になったと思っています。
3.【成功】小売業株を10年以上保有し株価は2.5倍に!(60代女性・パート勤務)
近所にありよく利用する大手スーパーC社株で、株を保有するとオーナーズカードをもらえることから投資しました。
オーナーズカードを保有すると、割引価格で買い物ができたり、買い物時の休憩に利用できるラウンジが使えたりすることが魅力です。
C社株を購入後に株価が下がり、損失を抱える期間もありましたが、10年以上保有して株価は2.5倍になりました。
以前に比べると、ラウンジの利用の回数制限ができるなど改悪したと感じますが、恩恵は十分受けていると思うので、このまましばらくは株を保有し続ける予定です。
【まとめ】初心者は長期投資がおすすめだが、定期的な見直しは必須
毎日株価を注視できない人や初心者の方は、株の長期投資がおすすめです。
将来にわたり株価が上がりそうな銘柄に投資することで売却益を得られたり、長期間にわたって配当や株主優待などの利益を得られたりするからです。
ただし、株価は必ず上がるわけではなく、企業の業績や経営状態の悪化や不祥事により下がってしまう可能性もあります。
また、自社だけの要因ではなく、ライバル企業の台頭や経済全体の動きによって株価が下がるケースがあることも頭に入れておきましょう。
短期的な下落だと考えるのであれば一時的に損失を抱えても保有し続ければよいですが、雲行きが怪しいと考える場合は損切りをして、別の銘柄に投資をしたほうがよいケースもあります。
長期投資を前提とするからといってほったらかしにせず、定期的な見直しは怠らないようにしましょう。
※本記事内で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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