2025年6月24日、東京・ホテルニューオータニで開催された日本製鉄(証券コード:5401)の株主総会。
買収額がなんと2兆円にも及んだUSスチールの子会社化という歴史的なディールを成し遂げ、国内外から注目を集める日本製鉄の「今」をどうしても知りたくて、株主である「編集部員Z(ゼット)」が初めてリアル株主総会に潜入してきました。
この記事では、日本製鉄の株主総会の会場の雰囲気から経営陣の発言、株主のリアルな声、そして今後の株価展望まで、現場で感じたことをもとに余すところなくレポートします!
予想以上に若い出席株主が多かった
日本製鉄の株主総会は、格式高いホテルニューオータニが会場でした。
受付を済ませておごそかな雰囲気の会場に入ると、まず驚いたのが株主の年齢層の幅広さでした。
「株主総会=シニア世代がメイン(?)」という先入観を持っていた編集部員Zですが、実際には30~40代と思しき男女が目立っており、出席者全体の3~4割は現役世代のように見受けられました。
日本製鉄という今ホットな企業に、若い現役世代も大きな期待を寄せていることが肌で感じられました。

「お土産なし」でもうれしい無料ドリンクサービス
かつては株主総会の「お土産」が話題になることも多かったですが、コロナ禍以降はその慣習もすっかり減少しています。
今回の日本製鉄の株主総会でもその例外ではなく、お土産はありませんでした。
しかし、受付前にはジュースやアイスコーヒーなどのソフトドリンクが無料提供されており、蒸し暑い季節にはありがたい気配りがありました。
「お土産がないのはちょっとさみしいけど、このサービスはうれしい!」
と感じた出席株主も多かったのではないでしょうか。
少なくとも編集部員Zはアイスコーヒーを2杯飲んでほっとひと息。落ち着いて株主総会に臨めました。

株主総会の雰囲気は?拍手と期待感に包まれて
午前10時からの定刻通りに始まった日本製鉄の株主総会。会場は静かな緊張感に包まれつつも、どこか前向きな空気が漂っていました。
一部には経営方針や配当政策などに不満を述べる株主もいましたが、全体としては経営陣の説明に納得し、拍手が起こる場面も多々ありました。
USスチール買収という大きなチャレンジと成果を経て、株主の多くが日本製鉄の今後に期待を寄せていることが伝わってきました。

橋本会長の圧倒的なリーダーシップが印象的
今回の株主総会で最も印象に残ったのが、代表取締役会長 兼 CEOの橋本英二氏の存在感です。
株主総会の議長として壇上に立つ橋本氏の姿は堂々としており、その発言にも自信と迫力が感じられました。
「USスチールにおける米政権とのディールは、まさに時間切れ寸前で成立しました」
と語るその表情は、安堵というよりも達成感に満ちていました。
株主総会の前日の6月23日には、赤沢亮正経済再生担当大臣が橋本会長にトランプ政権との交渉の秘訣を教えてもらった(かもしれない?)というニュースも流れており、株主総会の会場の空気はどこか明るく、ポジティブなムードに包まれていたのも印象的でした。
出典:テレ朝NEWS「日鉄・橋本会長らが赤沢大臣を訪問『政府の側も関税交渉をしっかりやっていきたい』」
USスチール買収をめぐる米政権との攻防
今回の株主総会の最大のトピックは、やはりUSスチールの買収成功でした。
橋本会長は「この買収が妥当であることを理解してくれたのはトランプ大統領だった」と語る一方で、バイデン前大統領に対しては「何の根拠もなく買収を認めなかった」と厳しい言葉を投げかけていました。
米国のトランプ政権の動向が、日本企業のグローバル戦略にいかに大きな影響を与えているか、そのリアルを目の当たりにした瞬間でした。
株主総会における2つの重要論点を深掘り
今年の株主総会で特に注目された論点を、日本製鉄の公式資料などから2点ピックアップし、その内容をさらに深掘りしてみます。
USスチール買収のシナジーと成長戦略
日本製鉄はUSスチールの高度な技術力やブランド力を活用し、グローバル市場での競争力強化を目指すと説明しました。
USスチール買収によるコストシナジーや研究開発力の向上が期待されており、「日本製鉄が世界の鉄鋼業界でどこまで飛躍できるか」という株主からの期待も大きいようです。
また、USスチールの持つ顧客基盤やサプライチェーンを活かし、北米市場、さらにはUSスチールによる影響力が強いとされる東欧市場でのプレゼンス向上も狙っています。
際立つ収益力を武器に国内・海外事業の強化・深化・拡充
日本製鉄は、日本国内の鉄鋼需要が想定を超えて低迷するなかで国内製鉄事業のさらなる強化を図っています。
さらに主に米国、インド、ASEAN(東南アジア諸国連合)を軸に海外事業の深化・拡充することを明言しています。
世界の鉄鋼メーカーの中でも粗鋼トンあたり利益が際立って高い日本製鉄としては、その事業収益ノウハウを海外事業に生かすことで、「1億トン1兆円ビジョン」(グローバル粗鋼生産能力:1億トン、実力ベース連結事業損益:1兆円)の早期実現を目指しています。
出典:日本製鉄「当社の経営概況と今後の取組み方針」
株主質問タイム:中国とインドの市場をどう見る?
株主質問の時間には、10名の株主が挙手して発言しました。
なかでも印象的だったのは、中国とインドの鉄鋼市場に関する質問でした。
中国市場については、安価な鋼材がグローバル競争を激化させている現状を踏まえ、「中国の鉄鋼市場とは徹底的に戦う。日本製鉄は品質と技術力で勝負する」との強い姿勢を経営陣が表明しました。
インド市場については、日本製鉄は2019年から現地企業の買収を進めていて、すでに利益貢献をしていること、今後もインドを最も価値の高いマーケットと位置づけていることが強調されました。
インドの人口増加や経済成長を背景に「今後の成長ドライバー」としてのインド市場の重要性が改めて示されました。
さらに、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体として排出量ゼロを目指す「カーボンニュートラル」への対応に関する質問があり、経営陣は「鉄鋼業界の脱炭素化は避けて通れない課題。技術革新と投資を続けていく」と力強く語っていました。
日本製鉄の株価は割安?市場の評価と今後の展望
株主総会直後の2025年6月24日の終値は2,705.5円。その後も日本製鉄の株価は大きく下がることなく推移しており、いったん底を打った印象です。
証券会社やアナリストなどからは財務負担などを理由に格下げや目標株価の引き下げの動きも見られます。
しかし、USスチールが保有する高度な技術の有効活用が進んで収益力が高まれば、現在の日本製鉄の株価水準(2,700円台)は割安と見る向きもあります。
株主総会後の株価が大きく下がっていない背景には、「あのトランプ大統領とディールをやり切った」という日本製鉄の底力や、USスチール買収による将来への期待感があると考えられます。
今後はUSスチールの技術や北米市場でのシェア拡大が、どこまで収益に結びつくかが注目ポイントです。
まとめ:日本製鉄の株主総会は今後を占う熱い現場だった

今回の株主総会は、日本製鉄の変革と挑戦を象徴する一大イベントでした。
USスチール買収という歴史的な成果を経て、グローバル市場での新たな成長を目指す経営陣の姿勢が、株主にも伝わっていると感じました。
もちろん、企業自身が抱える財務負担やグローバルリスクなど課題は山積していますが、トランプ大統領としたたかなディールを完遂した日本製鉄に、今後も期待したいところです。
編集部員Zとしても引き続き「日本製鉄ウォッチャー」として、注目のニュースが報じられれば記事を出していく予定ですので、どうぞご期待ください!
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