なぜ、さわかみファンドは20%程度という、非常に高い現金比率を維持しているのでしょうか?
現状、大半の日本株アクティブファンドは、フルインベストメントに近い状態を維持しており、現金比率は1%前後というファンドも少なくありません。
それに対してさわかみファンドの現金比率20%程度というのは、いかにも高いという印象を受けます。
この記事では、さわかみファンドの高い現金比率の真相やパフォーマンスへの影響に迫ってみたいと思います。
■この記事のポイント
- さわかみファンドは現金比率が20%程度と高いから日本株インデックスファンドより運用成績は低い
- 現状況を見ると、さわかみ投信の新聞広告には「虚偽」の可能性もあり得る
- 暴落時に株の全力買いをしてもさわかみファンドのパフォーマンスは厳しい
さわかみ投信の新聞広告に「虚偽」がある⁉
2025年4月30日、さわかみ投信は朝日、読売、日経の3紙に全面広告を出しました。
それには「さわかみファンドは現金比率を高めて、次の株価急落時に徹底的に買い向かいます」とあります。
さわかみ投信の代表取締役社長である澤上龍氏の名義で、以下の文章が書かれています。
この十数年、さわかみファンドはインデックスファンドと同程度と言われてきました。アクティブファンドなのに少し物足りないよ……と。
それでも私たちは、来るべき日のために現金を残し、信じた道を貫きました。
一人の人間の言動によって揺さぶられる経済、そして株式市場。
私たちはファンドにおける現金比率をさらに高めました。
今後、株価が割安と判断したら一斉に買い出動する所存です。
どんなに経済が悪化しようと、我々の生活が消滅することはありません。
ゆえに社会に必要とされる企業は、景気の荒波を乗り越えられるはずです。
そうした状況を、そして企業を支え寄り添うのが長期投資家の役目です。
ファンド仲間への成績のため、相場動向を追いかけるような運用を心掛けたらどう?
しかし、企業が最も苦しい時に寄り添えないなんて私たちの長期投資ではありません。
いや、むしろ強く言いたい……。
長期投資家の皆さん、非常時だからこそリスクマネーを供給しませんか?
自分の財産はもちろん大事。しかし社会の存在も同様に大切です。
まずは社会を未来につなぎ、その結果を分かち合うのが都市の醍醐味でしょう。
社会が疲弊したら自分の財産なんて言っていられないのです。
いよいよ長期投資家の出番が来ます。
短期的に上手く立ち回るのではなく、長期的な視野で臨んでいきましょう。
未来に、「千載一遇のチャンスだった」と言える日が来ると信じています。
上記の広告の文章には大きな間違いがあります。
まずそれを指摘しておきますが、文章の冒頭にある、
「この十数年、さわかみファンドはインデックスファンドと同程度と言われてきました」
という部分がそれです。
2025年4月30日時点において、さわかみファンドの設定来の運用成績は、配当込みTOPIX(税引後)に対して26.94%上回っています。
もちろんこの数字は、さわかみファンドが一切分配金を出さずに運用している一方で、配当込みTOPIXは税引後なので、割り引いて見る必要があります。
本来なら配当込みTOPIXも税引前で比較するべきところですが、データがないためやむを得ない状況での比較であることをご了承いただければと思います。
それはさておき、その比較においても、さわかみファンドの運用成績はインデックスと同様ではなく、負け続けてきたのです。
広告の文章では「この十数年」となっているため、正確な期間を特定できませんが、たとえば2011年8月17日から2025年4月30日までの、さわかみファンドの基準価額と配当込みTOPIX(税引前)とを比較すると、さわかみファンドの運用成績は配当込みTOPIX(税引前)に対して、▲26.50%となっています。
ちなみに直近の数字を見ると、2026年5月22日時点ではさわかみファンドは配当込みTOPIX(税引前)に対して▲32.56%ですから、リターンは一向に改善していないことになります。
こうした点からも、「この十数年、さわかみファンドはインデックスファンドと同程度と言われてきました」という冒頭の文章は、事実を誤認させるものと言ってよいでしょう。
さわかみファンドがインデックスファンドより運用成績が悪い理由
さて、税引後の配当込みTOPIXにさえ、これだけ大負けしているさわかみファンドがなぜ、このような運用成績に甘んじているのでしょうか?
その原因は前編の記事でも触れたように、現金比率が極めて高いからに他なりません。
約20%ものキャッシュを保有していたら、最近の株価上昇に追い付けないのは当然です。
さわかみファンドの運用資産総額は、5月22日時点で5,056億8,700万円ですから、その20%といえば、実に1,011億3,700万円もの資金が、全く運用されずに放置されているのです。
では、なぜこれほどまでに現金比率を高めることに固執しているのでしょうか?
広告の文章にはこうあります。
「それでも私たちは、来るべき日のために現金を残し、信じた道を貫きました。一人の人間の言動によって揺さぶられる経済、そして株式市場。私たちはファンドにおける現金比率をさらに高めました」。
「来るべき日」とは、日本の株価が暴落する日を指しているのだと思います。
この広告が出たタイミングからすると、「一人の人間の言動によって揺さぶられる……」の「一人の人間」とは、トランプ米大統領のことと推察できます。
つまりトランプ関税で株価が急落した状況を見て、さわかみファンドは現金比率をさらに高めたのでしょう。
TOPIXで見ると、2025年3月26日の高値、2821.90ポイントから、4月7日の安値である2,243.21ポイントまで、実に20.51%もの急落に見舞われたわけですが、それでもさわかみファンドが現金比率を高めたとすると、20%程度の株価下落は買いに動くほどの下落ではないと考えている可能性があります。
直近で株価が急落したのは、2026年3月23日にかけて、イラン攻撃が行われた局面でしたが、この前後のTOPIXは、2月27日の急落前高値である3,938.68ポイントから、急落後の安値である3,447.34ポイントまで12.47%の下落率でしたから、当然、買いに行くはずもなく、現金比率を見ると、2月27日が19.49%であり、株価急落を経た4月30日は19.79%でした。
現金比率が上がるにつれてさわかみファンドの運用成績は悪化
過去に遡って、さわかみファンドの現金比率の推移を決算日ベースで追うと、2012年8月23日は0.5%でした。
大半が株式で運用されていたのです。
その後、2016年8月23日には14.50%まで高められましたが、2021年8月23日は6.9%まで低下しました。
その後、株価が横ばいで推移するなか、恐らくコロナ禍における先行き不透明感の強さを嫌気したからか、2022年12月末にかけて、さわかみファンドはその現金比率を14.5%まで引き上げましたが、株価が回復していくなかで、現金比率を徐々に引き下げ、2025年1月末には10.4%まで低下させました。
それを再び一気に引き上げたのが2025年4月のことです。
「一人の人間の言動によって揺さぶられる経済、そして株式市場。私たちはファンドにおける現金比率をさらに高めました」という言葉は嘘ではなく、現金比率を一気に19.5%まで引き上げたのです。
そしてそれ以降の現金比率は、ほぼ20%前後の水準を保持しています。
そして、これはあくまでも結果に過ぎませんが、TOPIXは2026年2月末にかけて47.67%も上昇しましたが、さわかみファンドの騰落率は35.39%の上昇にとどまったのです。
ちなみに日経平均株価の上昇率は、同じ期間中で63.27%にも達していて、「さわかみファンドを買うくらいなら、日経平均株価に連動するインデックスファンドを買った方がはるかに良い」という状況になりました。
もちろん、たかだか2025年4月から2026年2月までの短い期間での比較なので、これだけで「さわかみファンドは運用が下手」などと言うつもりはありません。
とはいえ、さわかみファンドの運用成績が、インデックスに対して劣後したのは、この10ヵ月の話ではなく、それこそ前CIO(最高投資責任者)が運用を引き継いだ2011年8月以降、インデックスに負けた状態が続いているのです。
それでも前CIOが運用を担当していた当時は、配当込みTOPIX(税引後)に対して10%程度の劣後で済んでいました。
しかし、現在のCIOが担当するようになった2022年7月以降、インデックスの動きに全くついていけなくなり、配当込みTOPIX(税引後)に対して30%超も劣後する状況になりました。
さわかみファンドは暴落時に株の全力買いをしても意味がない⁉
これだけ長期にわたってインデックスに負けている状況を、さわかみファンドを「来るべき日のために」などという言葉で総括してもよいのでしょうか?
また現CIOはサイトにあるセミナーQA集において、「日経平均株価に対して大きく下回っている」という批判に対し、
「世界のリーダーたちの不安定な言動でイラン戦争の長期化が不安視される現状では、お客さまのご資産をしっかりお守りするのが大前提です。
ただし、何らかの引き金で市場が暴落する際には分厚く準備した現金で勝負の応援買いにいきます」
と言っていますが、その投資効果はどの程度でしょうか?
ちょっとシミュレーションをしてみましょう。
現在のとあるファンドの純資産総額が5,000億円で、その20%が現金だとすると、ポートフォリオは株式4,000億円、現金1,000億円になります。
株価が暴落して、半値になったとしましょう。
この場合、ポートフォリオは株式2,000億円、現金1,000億円で、純資産総額は3,000億円まで目減りします。
その時点で現金1,000億円を全額、株式に投資して、株式の組入比率を100%まで引き上げた後、しばらくして株価が元の水準に戻ったとしましょう。
そして、現金で投資した1,000億円の株式がとても優良だったため、株価が戻る過程において、その評価額が3倍になったとします。
すると、暴落で2,000億円に目減りしていた、もともと株式に投資していた部分が4,000億円に戻り、さらに現金から株式に切り替えた1,000億円が3,000億円になりますから、合計で純資産総額は7,000億円になります。
そうなると、もともと株式で運用していた部分は、2,000億円が4,000億円に戻るので値上がり率は100%です。
この値上がり率は、インデックスも同じだと仮定します。
対して全体の純資産総額は、3,000億円から7,000億円に増えるので、値上がり率は133.33%になります。
その結果、取っておいた20%の現金で、暴落後に全力買いして、株価が元の水準まで戻った時の、インデックスに対する超過リターンは33.33%です。
「やっぱり現金を温存して、暴落した時に全力買いする意味はある」と思いたいところですが、さわかみファンドの場合、2011年8月から見ると、すでにインデックスに対して30%超負けているわけですから、33.33%の超過リターンが実現したところで、それほど大きな投資効果は期待できないかもしれない、とも考えられます。
それでも、「苦しい時に企業を支えるのが長期投資家の使命だ」と言うのであれば、我慢して保有するのもひとつの見識かもしれませんが……。
■さわかみファンドの検証記事の前編はコチラをご覧ください。
さわかみファンドの解約は増えている?本当の評判を徹底検証【前編】
■監修&執筆:鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)
岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て2004年に独立。投資信託、資産運用を中心に原稿を執筆するのとともに、単行本の企画、ライティングも行う。最新刊に『銀行の本店はなぜ仰々しいのか? 金融業界の謎』がある。X:@JOYnt_suzuki



『さわかみファンド』の口コミ
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