2025年10月21日、高市早苗氏が日本初の女性総理大臣に選出され、日本の株式市場における大きな関心事となっています。
投資家の視線は、高市政権が推進するであろう政策をもとに、「高市銘柄」と呼ばれる企業群に集中しているのです。
高市銘柄とは具体的に何を指し、なぜこれほどまでの注目を集めているのでしょうか?
この記事では、高市政権の重要テーマである「経済安全保障」を軸に、AI(人工知能)や防衛、先端医療といった分野の銘柄が期待される理由や、注目したい厳選5銘柄、期待が先行する今だからこそ知っておきたい投資の注意点まで網羅的に解説していきます。
高市銘柄とは?なぜ期待されている?
高市政権の誕生で、今まさに株式市場の主役となっている「高市銘柄」。
そもそも高市銘柄とは、高市首相が掲げる政策、その中でもとくに「経済安全保障」を強力に推進する過程で、業績への大きな恩恵が期待される企業群を指すものです。
高市銘柄が注目を集める大きな理由の1つに、高市首相の経済思想があります。
彼女は「アベノミクスの後継者」を自負する「積極財政論者」としても知られています。
これは、国の借金を恐れず、必要な分野には大胆な財政出動(積極投資)を行うべきだという考え方です。
「政策に売りなし」という相場の格言がある通り、国のトップが特定の分野に注力すると明言すれば、そこにはばく大な国家予算やリソースが集中投下されることになります。
積極財政論者の高市首相であれば、その規模はこれまでの政権を超えるレベルになるかもしれません。
これが、株式市場において高市銘柄が期待を集める最大の理由といえます。
高市首相の政策でとくに重要視されている分野が「経済安全保障」、つまり国の独立や国民生活を経済面から守り抜くという考え方です。
たとえば、半導体のような重要物資のサプライチェーンを国内で確立したり、電力網や金融システムをサイバー攻撃から守ったりすることが含まれます。
具体的には2025年10月24日の所信表明演説で次のように語っています。
AI・半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、サイバーセキュリティ等の戦略分野に対して、大胆な投資促進、国際展開支援、人材育成、スタートアップ振興、研究開発、産学連携、国際標準化といった多角的な観点からの総合支援策を講ずることで、官民の積極投資を引き出します。
出典:首相官邸サイト「第219回国会における高市内閣総理大臣所信表明演説」
上記で挙げられている分野は、国の進むべき大きな方向性を示しているテーマであることは間違いなく、中長期的な視点で注目する価値は非常に高いといえるでしょう。
高市銘柄と小泉銘柄の違いは?自民党総裁選の結果でどう変わる可能性があった?
2025年10月の自民党総裁選は事実上、高市首相と小泉進次郎氏の一騎打ちの様相を呈していました。
「高市銘柄」や「小泉銘柄」という言葉が象徴するように、両者の政策は株式市場が注目するテーマも明確に異なりました。
高市銘柄が「経済安全保障」を重要テーマに掲げているのは、前述の通りです。
これは、地政学的リスクや技術覇権争いといった「外部からの脅威」に対し、国の基盤を徹底的に強化するアプローチです。
一方、小泉氏については、以前環境大臣を務めていたこともあり、環境問題として気候変動やESG(環境・社会・ガバナンス)の対応、再生可能エネルギーによる脱炭素社会の実現といったテーマの銘柄が注目されていました。
また、DX(デジタル改革)による行政や社会の効率化、子育て支援や地方創生といった分野も小泉氏に関連する銘柄と考えられています。
もちろん、小泉氏が掲げた政策がすべて否定されたという意味ではなく、例えばDXや脱炭素は、高市政権下でも継続されるべき中長期的な課題です。
しかし、高市首相の誕生により「優先順位」は明らかに変わりました。
国の予算とリソースが、まずは経済安全保障の分野に重点的に配分される。
この明確なシグナルこそが、自民党総裁選の結果が株式市場に与えた最大のインパクトといえるでしょう。
テーマ別でチェック!注目したい高市銘柄5選
高市銘柄の全体像が見えたところで、投資家としてぜひ知りたいのは「具体的にどの企業(銘柄)が恩恵を受けるのか?」という点に尽きるでしょう。
高市首相が掲げる経済安全保障の政策は、非常に多岐にわたります。
その中でも、国の中核を担う可能性があり、株式市場の注目がとくに高まっている5つのテーマを厳選しました。
- AI
 - サイバーセキュリティ
 - セキュリティ
 - 医療
 - 核融合
 
それぞれの分野で、中心的役割を果たすと目される具体的な注目銘柄をピックアップして紹介していきます。
【AI銘柄】富士通(6702):米エヌビディアとAI半導体を共同開発
| 株価 | 4,031円 | 
| 時価総額 | 8兆3,486億円 | 
| 配当利回り | 0.74% | 
| PER(連) | 18.36倍 | 
| PBR(連) | 3.62倍 | 
| ROE(連) | 12.58% | 
東証プライム上場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025/10/31時点
AIの分野で注目したい企業(銘柄)に富士通が挙げられます。
たとえ同盟国のアメリカといえども、特定の国にAI技術やデータを依存する状態は、国家安全保障上の大きなリスクになりかねません。
信頼できる高度な国産AI関連技術を持つ富士通に対して、政府との連携強化や、安全保障分野を含む大型プロジェクト受注への期待が急速に高まっているといえます。
富士通は2025年10月3日、アメリカ半導体大手エヌビディアのチップと自社の技術を接続させた、新たなAI向け半導体を共同開発すると発表しました。
世界トップのエヌビディアが認める技術力を富士通が有していることが、今回の発表を見てもわかります。
国策としての追い風と、世界最先端の技術トレンドをつかむ主体的な動きが両輪となり、富士通のAI事業は新たな成長フェーズに入る可能性を十分に秘めています。
ただしAI分野は、今や米国の巨大IT企業が兆円単位の研究開発費を投じる世界的な主戦場となっています。
AI分野におけるグローバルな開発競争の中で、富士通がどれだけの技術的優位性を保ち、ビジネスとして収益化していけるのかが今後の焦点となりそうです。
【サイバーセキュリティ銘柄】FFRIセキュリティ(3692):純国産サイバーセキュリティ
| 株価 | 10,840円 | 
| 時価総額 | 887億円 | 
| 配当利回り | 0.13% | 
| PER(連) | 119.91倍 | 
| PBR(連) | 29.83倍 | 
| ROE(連) | 27.65% | 
東証グロース上場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025/10/31時点
現代社会では、国家、企業、個人のあらゆる活動がサイバー空間に大きく依存しています。
もはやサイバーセキュリティは、物理的な防衛と同じか、それ以上に重要な安全保障の中核といえるでしょう。
高市首相は就任前から一貫してサイバーセキュリティの重要性を説いており、高市政権の重要課題の1つに掲げています。
FFRIセキュリティは、セキュリティ技術の基礎研究、コンサルティング、セキュリティ対策ソフトの研究開発などの事業を行っています。
FFRIセキュリティの特徴として、高度な技術力を持つ、数少ない「純国産」のセキュリティベンダーであることが挙げられます。
高市政権下でサイバー防衛予算が増額される流れは間違いなさそうであり、その巨大な需要の受け皿として、FFRIセキュリティに白羽の矢が立つことへの期待感は非常に高まっています。
とはいえ、サイバーセキュリティ市場は、海外の巨大IT企業がひしめく世界的な激戦区でもあります。
国策の後押しという強力なアドバンテージはありますが、熾烈な技術開発競争の中で期待通りのシェアを獲得し続けられるかは、今後注目していく必要があるでしょう。
【セキュリティ銘柄】日本製鋼所(5631):火砲システムのリーディングカンパニー
| 株価 | 10,140円 | 
| 時価総額 | 7,545億円 | 
| 配当利回り | 0.87% | 
| PER(連) | 40.34倍 | 
| PBR(連) | 3.85倍 | 
| ROE(連) | 9.70% | 
東証プライム上場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025/10/31時点
サイバー空間と並び、経済安保のもう1つの重要な柱となるのが、国土そのものを守る物理的な防衛力です。
昨今の緊迫化する国際情勢や地政学的リスクの高まりを受け、日本の防衛力強化は待ったなしの課題となっています。
高市首相も就任前から防衛力の抜本的強化を明言しており、同盟国であるアメリカからも防衛費の増額を求める声は根強くあります。
こうした背景から、防衛予算の大幅な増額はもはや既定路線と市場では受け止められているのです。
日本製鋼所は、戦艦「大和」の主砲にも携わった歴史を持ち、現代においても火砲の砲身などで高い技術力を誇る、日本の防衛産業を支える老舗企業の1つに数えられます。
防衛費の大幅増額は、日本製鋼所の防衛関連事業にとって強力な追い風となるでしょう。
なお、防衛銘柄の株価は、地政学的リスクの高まりに非常に敏感に反応する特性を持ちます。
裏を返せば、国際的な緊張が緩和し「平和的なムード」が広がった場合、一転して「材料出尽くし」と見なされ、売られる可能性もはらんでいます。
【医療銘柄】Heartseed(219A):iPS細胞を扱うバイオベンチャー
| 株価 | 1,733円 | 
| 時価総額 | 395億円 | 
| 配当利回り | 0.00% | 
| PER(連) | 364.08倍 | 
| PBR(連) | 5.49倍 | 
| ROE(連) | ▲13.68% | 
東証グロース上場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025/10/31時点
経済安全保障は、国民の健康と生命を守る医療分野とも密接に関連します。
医療銘柄として注目したいのが、iPS細胞を用いた再生医療という最先端分野で世界に挑む「Heartseed」です。
Heartseedは、慶応大学発のバイオベンチャーであり、iPS細胞から作った心筋球を移植することで、重症心不全の根本治療を目指すという、極めて難易度の高い研究開発を手がけています。
高市首相は、最先端技術への理解が深いことでも知られ、日本の成長戦略の柱としてベンチャー企業やスタートアップ企業への積極投資も掲げてきました。
一般的に、黒字化が難しいバイオベンチャーにおいて、Heartseedは2025年12月期中間期で、創業来初となる黒字化を達成しています(なお、通期見込みは赤字のまま修正していません)。
創業来初の黒字化は、研究開発の進展とビジネスモデルが両立し始めた証左とも受け取れ、高く評価できるポイントでしょう。
ただし、Heartseedは時価総額が比較的小さい中小型株であり、典型的なバイオベンチャーです。
臨床試験の結果や企業との提携のニュース1つで株価が急騰したり急落したりする、特有のリスクを抱えている点には注意が必要です。
【核融合銘柄】日立製作所(6501):日本を代表する核融合の中核銘柄
| 株価 | 5,318円 | 
| 時価総額 | 24兆3,647億円 | 
| 配当利回り | ー | 
| PER(連) | 32.35倍 | 
| PBR(連) | 3.94倍 | 
| ROE(連) | 10.66% | 
東証プライム上場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025/10/31時点
高市首相は、資源に乏しい日本のエネルギー自給率を抜本的に高める切り札として、次世代エネルギーとして呼び声が高い「核融合」の実現に強い意欲を見せています。
高市首相はたびたび核融合の重要性と将来性について言及しており、その本気度の高さがうかがえます。
日立製作所は、核融合分野における日本を代表する中核企業です。
現在、世界的なプロジェクトとして、日本を含む33の国と地域が協力し、フランスに巨大な核融合の実験炉を建設する「ITER(イーター)計画」が進行中です。
日立製作所は、このITER計画において、核融合炉の心臓部であるプラズマを閉じ込めるための超伝導コイルや、超高圧電源試験施設の製作など、重要な部分で大きな貢献を果たしています。
ただし、日立製作所に投資するにあたって、核融合技術の実用化が2030年、あるいは2050年以降ともいわれる、長期的なテーマであることには注意が必要です。
そのため、日立製作所の短期的な業績へのインパクトは現時点で限定的といわざるを得ません。
高市銘柄へ投資する際の3つの注意点
ここまで「高市銘柄」の中でも注目したい銘柄を厳選して解説してきました。
「国策に売りなし」という相場の格言があるくらいですから、投資家にとって注目に値するテーマといえるでしょう。
しかし、投資にはリスクが必ず伴います。
高市銘柄に投資する上で、認識していきたい注意点を3つの側面から解説します。
注意点1:少数与党による政権運営リスク
最大のリスクとして挙げられるのが、「高市政権が少数与党である」という政治的な現実です。
高市首相がどれほど強力なビジョンとリーダーシップを持っていても、政策の実行には国会での法案可決や予算の承認が不可欠になります。
少数与党であることは、重要な法案を通すために、常に野党との厳しい交渉や妥結を迫られることを意味します。
とくに、防衛費の大幅な増額や核融合のような超大型の長期投資は、巨額の財源を必要とするため、野党の抵抗が予想されます。
万が一、重要法案が通らず政策が停滞したり、政権運営が行き詰まったりするような事態になれば、「政策期待」という根拠で買われていた高市銘柄は、失望売りに見舞われる危険性をはらんでいます。
注意点2:政策実現の不確実性
高市首相がAIに投資すると掲げることと、企業のAI部門の売上が実際に増えることの間には、大きな時間差と不確実性があります。
高市首相が政策を実行するためには、巨額の予算の確保や法規制のクリアなど、さまざまなハードルを越えなくてはいけません。
関連する企業の売上や利益が計上されるまでに、数年かかる可能性もあります。
とくに核融合のようなテーマは、実用化まで数十年単位で考える必要があります。
注意点3:期待先行による「高値づかみ」のリスク
3つ目は「高値づかみ」のリスクです。
現在、高市銘柄として注目される企業の中には、実際の業績が向上する前の期待や思惑で株価が上昇している銘柄もあります。
このような銘柄は、株価がその企業の本来持つ収益力から、かけ離れて割高になっている状態を生み出します。
株式市場の期待が継続している間は株価が維持されますが、「政策が実行されない」あるいは「企業業績が伸びない」など、何かのきっかけで期待が剥落すると、実態とかけ離れた株価は一気に下落する可能性があります。
銘柄に投資をする際には、企業のファンダメンタルズを常に意識し、実態と比べて割高すぎないかを見極める必要があります。
【まとめ】国策で期待できる可能性が高いのが高市銘柄
高市政権の誕生により、「経済安全保障」を軸とする高市銘柄は株式市場における重要テーマの1つとなりました。
本記事では次の通り、その中でも中核となる5つのテーマと銘柄を紹介しました。
- AI
 - サイバーセキュリティ
 - セキュリティ
 - 医療
 - 核融合
 
高市銘柄には国策という強力な追い風が期待され、株価上昇の可能性を秘めています。
しかしその一方で、少数与党による政権運営リスクや、期待先行による「高値づかみ」の危険性といった、政策的テーマ株特有の不確実性をはらんでいることも事実です。
有望テーマという市場の成長性を評価すると同時に、投資対象とする企業の業績や財務状況を冷静に分析する視点をもって投資を行えば、成功する可能性を高められるでしょう。
※本記事内で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。


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