「PayPay」という、今や私たちの生活に欠かせない決済サービス。
その名を冠した資産運用会社「PayPayアセットマネジメント」が、事業開始からわずか数年で終了するというニュースは、多くの投資家に衝撃を与えました。
事実、PayPayアセットマネジメントは2025年9月末をもって事業終了となっています。
なぜ、IT大手のLINEヤフーと金融大手のみずほフィナンシャルグループという、強力なタッグによって生まれたはずの会社が、これほど短期間で事業を終えることになったのでしょうか?
その背景には、両社の思惑のすれ違いと、事業計画の見通しの甘さがあったとされています。
本記事では、PayPayアセットマネジメントの事業終了の真相、投資家への影響、そして今回の事例から学ぶべき「失敗しない運用会社の選び方」までをわかりやすく解説します。
大切な資産を預けるパートナー選びで後悔しないために、ぜひ最後までご覧ください。
PayPayアセットマネジメントとはどんな運用会社?

出典:PayPayアセットマネジメント公式Webサイト
PayPayアセットマネジメントは、多くの方が日常的に利用する「PayPay」ブランドを掲げ、主に若年層や投資初心者をターゲットとした資産運用サービスを展開していた会社です。
最大の特徴は、IT業界の巨人であるLINEヤフーと、日本のメガバンクグループであるみずほフィナンシャルグループがタッグを組んで運営されていた点にありました。
LINEヤフーとみずほグループの共同出資
PayPayアセットマネジメントは、すでに旧ヤフーの子会社であったアストマックス投資顧問が2021年に商号を変更して生まれた運用会社です。
2022年、みずほフィナンシャルグループの中核をなす資産運用会社アセットマネジメントOneが、PayPayアセットマネジメントの株式49.9%を取得し、資本提携を結びました。
LINEヤフー側には、PayPayやLINEといったサービスで抱える膨大な若年層ユーザーを、資産形成という新たな金融サービスに取り込みたいとの思惑がありました。
一方、みずほ側にはネット企業が持つ若年層の豊富なデータや顧客基盤を活用し、新たな成長領域を開拓したいとの強い期待を持っていました。
このようにPayPayアセットマネジメントは、ITと金融の両業界の巨人が手を取り合い誕生した会社でした。
PayPayアセットマネジメントの商品・サービス

出典:PayPay投信AIプラス目論見書
事業終了の段階でPayPayアセットマネジメントが提供していた商品は、主に個人投資家向けの公募投資信託12本と、機関投資家向けの私募投資信託でした。
PayPayアセットマネジメントの投資信託は、投資初心者でもわかりやすいシンプルな商品ラインアップが特徴でした。
PayPayアセットマネジメントの公募投資信託 |
---|
PayPay投信バランスライト |
PayPay投信 米国株式インデックス |
PayPay投信 NASDAQ100インデックス |
PayPay投信 NYダウインデックス |
PayPay投資信託インデックス先進国株式 |
PayPay投資信託インデックス世界株式 |
PayPay投資信託インデックスアメリカ株式 |
PayPay投信 日経225インデックス |
PayPay投信AIプラス |
LOSA長期保有型国際分散インデックスファンド |
ソフトバンクグループ&日本企業厳選債券ファンド2022-06 |
ソフトバンクグループ&日本企業厳選債券ファンド2021-12 |
なぜPayPayアセットマネジメントは事業を終了した?投資家への影響は?

出典:PayPayアセットマネジメント公式Webサイト
ITと金融の巨人が手を組んだ華々しい船出から一転、PayPayアセットマネジメントは早すぎる事業終了を迎えることとなりました。
その背景には、事業計画の見通しの甘さと、両社の間に存在した時間軸のズレがありました。
そして、事業終了は投資家に小さくない影響を与えることになります。
見通しの甘さによる業績低迷
事業終了の直接的な原因は、深刻な業績低迷です。
PayPayアセットマネジメントは、当初の想定通りに顧客を獲得できず、事業は5期連続で赤字が続いていました。
事業終了の決定には、共同出資者であるLINEヤフーとみずほ側の事業に対するスタンスの決定的な違いがありました。
IT企業であるLINEヤフーは、スピーディーな事業展開と早期の黒字化を求める傾向にあり、赤字の事業に対し我慢の限界が早く訪れたとみられています。
一方、金融機関であるみずほ側は、資産運用ビジネスが軌道に乗るまでには時間がかかることを理解しており、少なくとも5年程度の時間軸で事業を育てていく計画でした。
みずほグループのアセットマネジメントOneによる資本参加は2022年8月です。
しかし、そのわずか1年後である2023年夏には、LINEヤフー側から廃業の打診があったと報道されています。
長期的な協業を信じて多額の出資をしたみずほ側にとって、これはまさに寝耳に水です。
「社内は騒然となった」といわれており、両社のコミュニケーションが必ずしも円滑でなかったことがうかがえます。
「繰上償還」と「アセマネOneへの移管」
事業終了に伴い、PayPayアセットマネジメントが運用していた投資信託は、2通りの措置が取られました。
次の4本の投資信託は、繰上償還(くりあげしょうかん)となりました。
- PayPay投信バランスライト
- PayPay投信 米国株式インデックス
- PayPay投信 NASDAQ100インデックス
- PayPay投信 NYダウインデックス
次の8本の投資信託は、アセットマネジメントOneへの移管です。
- PayPay投資信託インデックス先進国株式
- PayPay投資信託インデックス世界株式
- PayPay投資信託インデックスアメリカ株式
- PayPay投信 日経225インデックス
- PayPay投信AIプラス
- LOSA長期保有型国際分散インデックスファンド
- ソフトバンクグループ&日本企業厳選債券ファンド2022-06
- ソフトバンクグループ&日本企業厳選債券ファンド2021-12
移管された投資信託は、運用会社がアセットマネジメントOneに変わりますが、投資家はそのまま保有を続けることができます。
しかし、問題は繰上償還となった投資信託です。
繰上償還とは、投資信託の運用が当初予定していた満期を迎える前に途中で終了し、その時点の時価で全額が投資家に払い戻されることを指します。
投資家への影響:「強制的に損失が確定」「NISAの損失は繰り越しできない」
繰上償還の最大のデメリットは、自分の意思とは関係なく、損益が強制的に確定させられてしまう点です。
例えば、基準価額が下落し含み損を抱えている投資家は、「いつか価格が回復するまで持ち続けよう」と考えているかもしれません。
しかし、繰上償還によってその選択肢は奪われ、損失が確定してしまいました。
逆に利益が出ていた場合でも、意図しないタイミングで利益が確定し、課税対象となってしまいます。
さらに、NISA(少額投資非課税制度)口座で投資している場合は、別の悪影響があります。
通常、課税口座(特定口座や一般口座)で発生した損失は、他の金融商品の利益と相殺(損益通算)することや、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越す(繰越控除)ことが可能です。
しかし、NISA口座で発生した損失は、繰越控除制度の対象外となります。
つまり、NISA口座での損失は、他の利益と相殺もできず、ただ切り捨てられる「泣き寝入り」の状態になってしまうのです。
PayPayアセットマネジメントの事業終了は無責任?ネットやSNSなどの評判・口コミは?
自社の業績不振を理由に事業を終了し、投資信託を繰上償還する。
PayPayアセットマネジメントの決定は、投資家から見れば「あまりに一方的で無責任だ」と感じられても仕方がないでしょう。
ここでは、金融機関に求められる「あるべき姿」と、ネット上にあふれた投資家のリアルな声を見ていきます。
問われる「受託者責任」
今回の事業終了で、PayPayアセットマネジメントの姿勢、ひいては親会社であるLINEヤフーの経営判断において、「受託者責任」が果たされていたのか、という点が問われることになります。
受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)とは、「顧客の資産を預かる者は、顧客の利益を最優先に考えて行動しなければならない」という、金融機関に課せられた義務のことです。
投資家は、運用会社が長期にわたって安定的に資産を運用してくれることを信じて、大切なお金を託します。
にもかかわらず、運用会社が自社の赤字という「経営上の都合」を優先し、投資家の長期的な利益獲得の機会を一方的に奪うことは、受託者責任の精神に反していると言わざるを得ません。
ネット・SNSで噴出した酷評の嵐
事業終了のニュースが流れると、ネットやSNS上では、PayPayアセットマネジメントや親会社に対する投資家の怒りや失望の声が広がっています。
X(旧Twitter)では、次のような批判が数多く見受けられました。

出典:X

出典:X

出典:X
第2のPayPayアセットマネジメントを選ばないために!失敗しない運用会社の選び方
PayPayアセットマネジメントの事例は、企業の知名度やブランドイメージのみで、大切な資産の預け先を決めてはならないという点が教訓といえます。
では、私たちは今後、企業の甘い言葉にまどわされず、長期にわたって安心して資産を託せるパートナーを、どのように見極めればよいのでしょうか?
見るべきポイントは3つです。
これを押さえれば、少なくとも「運用会社の都合」で資産形成の道を絶たれるリスクを、ゼロに近づけることができるはずです。
ポイント1:純資産総額の大きさ(繰上償還条項に要注意!)
まず、最も重要かつわかりやすい指標が、投資信託の規模を表す「純資産総額」です。
投資信託を選ぶ際は、純資産総額が最低100億円を超えていることを1つの目安にしてください。
純資産総額が大きいということは、それだけ多くの投資家から支持され、信頼されている証です。
また、投資信託の「目論見書」に記載されている、「受益権口数が●●口を下回った場合、繰上償還されることがあります」といった繰上償還条項を確認しましょう。
純資産総額が小さい投資信託は、少しの資金流出で償還条項に抵触し強制終了させられるリスクが常につきまといます。
さらに、純資産総額の大きい投資信託を運用している運用会社は、日本での資産運用ビジネスに根を張って営業している可能性が高く、事業撤退のリスクが少ないといえます。
ポイント2:運用実績の長さ
次に確認すべきは、投資信託と運用会社の「運用実績の長さ」です。
資産運用は、一朝一夕で結果が出るものではありません。
さまざまな経済状況、市場の荒波を乗り越えてきた運用の経験こそが、信頼の礎となります。
運用会社や投資信託の運用実績が、最低でも5年、理想をいえば10年以上あるかを確認しましょう。
とくに、リーマンショックやコロナショックといった、世界的な金融危機を乗り越えてきた実績があれば、その運用体制は本物である可能性が高いといえます。
ポイント3:運用会社の業績が安定しているか
最後のチェックポイントは、「運用会社そのものの業績」です。
私たちは投資信託の成績ばかりに気を取られがちですが、その投資信託を運用している会社が傾いてしまっては元も子もありません。
運用会社の財務状況は、公式サイトのIR情報や「決算公告」などで確認できます。
見るべきは、運用会社が継続的に利益を上げられているかどうか。
赤字続きであったり、親会社の資金援助に頼りきりであったりする会社は、危険信号と判断すべきでしょう。
【まとめ】PayPayアセットマネジメントから学ぶ運用会社選びの重要性
今回は、PayPayアセットマネジメントの事業終了という衝撃的な事例を基に、その真相と私たち投資家が学ぶべき教訓について解説してきました。
ITと金融の巨人による華々しい提携も、経営の都合一つで、いとも簡単に投資家への責任を放棄する結果となりました。
このような事例の被害に遭わないためにも、長期的なパートナーとなる運用会社を選ぶ上で確認すべきことは、次の3つのポイントに集約されます。
- 純資産総額
- 運用実績
- 運用会社自体の経営
「運用会社や親会社が有名だから」といった安易な理由は、もはや思考停止に他なりません。
あなたの大切な資産を守れるのは、客観的な事実に基づいた冷静な判断なのです。
『PayPayアセットマネジメント』の口コミ
口コミ一覧