月利5%=年利60%!出資法違反で「預金商品」が売れなくなった金融詐欺集団の次の一手は?【連載第3回】

月利5%=年利60%!出資法違反で「預金商品」が売れなくなった金融詐欺集団の次の一手は?【連載第3回】

「出資法」という法律をご存じでしょうか?

そもそも出資法とは、正式名称「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」といいまして、私たち国民の財産を保護するために設けられた法律で、昭和29年(1954年)に制定されました。

お金は誰にとっても大事なもの。それを第三者に出資したり、預けたりして失ってしまう事態や、借り手の弱みにつけ込まれて、高額の手数料や高金利を要求されるような事態を防ぐのが、出資法の目的です。

国会議員が首謀者だった大型金融詐欺事件が約30年前に起きていた

出資法の条文は第9条までで構成されていますが、このうち投資詐欺に関連するのは、第1条の「出資金の受入の制限」と第2条の「預り金の禁止」です。

条文は次のようになっています。

<第1条>何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。

<第2条>業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。

2 前項の「預り金」とは、不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであって、次に掲げるものをいう。

1.預金、貯金又は定期積金の受入れ

2.社債、借入金その他いかなる名義をもってするかを問わず、前号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの

出典:e-Gov法令検索「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律

何しろ古い法律なので、言葉自体がわかりにくくなっていますが、要するに、

「銀行や信用金庫、信用組合などの金融機関以外の者が、元本保証を提示して、不特定多数の人からお金を集めてはいけませんよ」

と言っているのです。

しかし、今から30年弱ほど前の金融詐欺グループは、大半が「元本保証」「確定利回り」を提示して、不特定多数の人たちからお金を集めていました。

たとえば1997年に事件化した「オレンジ共済組合」が代表的な事例でしょう。

この事件は当時、参議院議員だった友部達夫(故人)が、「オレンジスーパー定期」という定期預金もどき商品を約2,500人に売り付け、約93億円を詐取したものです。

友部達夫率いる「オレンジ共済組合」の騙しのカラクリが巧妙かつ卑劣

オレンジスーパー定期は1992年から取り扱われるようになりましたが、元本保証のうえ、1年定期で年6.74%、3年定期で年7.02%を提示したことから人気化しました。

ちなみに、当時の預貯金金利がどの程度だったのかというと、郵便貯金(現ゆうちょ銀行)で扱われていた定額貯金の1年以上に適用された利率が年2.82%~3.75%、3年以上の利率が年4.07%~5%でした。そこから比較しても、オレンジスーパー定期の有利さが目立ちます。

これを全国約200ヵ所に代理店を展開して販売しました。

当時はバブルピークも過ぎ、日本では不良債権問題が深刻化し、デフレ経済の兆しが見え始めた時期でもあります。

当然、金利は低下傾向をたどっており、普通の銀行などで預金を利用していた人たちは、より利息がたくさん得られる金融商品を探していました。

そこに現れたのが、オレンジ共済組合の「オレンジスーパー定期」だったのです。

しかし、出資法を見れば一目瞭然、オレンジスーパー定期が違法な金融商品もどきであることがわかります。

そもそも、それを扱っていたオレンジ共済組合は、金融機関ではありません。

「共済組合」という名称がついていることから、騙された人たちの多くは、オレンジ共済組合を、国家公務員や地方公務員が加入している公務員共済の一種と思ったのかもしれません。

団体名からして公的機関的な印象を与えただけでなく、それを主催していたのが友部達夫という参議院議員だったことも、オレンジ共済組合に対する信頼感を高める舞台装置になりました。

そして、同共済組合がお金を集めるために販売した金融商品もどきの商品名が「オレンジスーパー定期」です。

スーパー定期といえば、銀行が扱っている自由金利型定期預金の名称です。

明らかに、「オレンジ共済組合という金融機関が扱う、オレンジスーパー定期という定期預金」というイメージを、植えつけさせようとしているのがミエミエです。

銀行などの金融機関が預金を通じて集めた資金は、おもにさまざまな企業の事業資金として融資され、融資と預金の金利差が、金融機関にとっての収益になります。

ところが、オレンジスーパー定期を通じて集められた資金は、当然のことながら企業の事業資金として貸し付けられることはなく、大半の資金は友部自身の選挙費用や政界工作費、借金返済や遊興費、組合専務理事だった妻や子らによって私的流用されていました

この事件の結末は、事件が発覚したことで1996年にオレンジ共済組合は倒産したものの、出資した資金が被害者の手元に戻ることはありませんでした。大半が使い込まれていたのです。

主犯だった友部は1997年に逮捕された後、議員を辞職せずに無罪を主張し続けましたが、2001年に最高裁で懲役10年の実刑が確定しました。

逮捕されてから実刑が確定するまでの4年間、友部は不登院ながらも参議院議員の座にあったため、合計で1億6,000万円近い歳費が支払われましたが、その大半は被害者らが差し押さえました。

とはいえ、集めた資金は約93億円ですから、焼け石に水ではあります。

参照:産経新聞「参院議員による前代未聞の巨額詐欺 『オレンジ共済組合事件』

出資法の網の目をかいくぐる新たな商材の投資詐欺が増加中

オレンジ共済組合事件後も、相変わらず金融機関でもない団体が、元本保証と確定利付を提示して資金を集める事件がありました。

前回の記事「暗号資産、CO2排出権…『すごい』と思わせるワードが出てきたら金融詐欺⁉」で触れたG&G事件やMRIインターナショナル事件も、海外の運用会社を謳っていたにも関わらず、なぜか円建てで元本保証と確定利付を提示して、資金を集めていました。

しかし、この手の事件が多発し、それに対して警鐘を鳴らす報道も増えたからか、「金融機関でもない団体や個人が、元本保証と確定利付を謳って、不特定多数の人たちからお金を集めるのは違法」ということが、知れ渡るようになりました。

近年は、この手の謳い文句で多額の資金を集めたという事件は、あまり耳にしないような気がします。

ところが敵もさるもので、最近は元本保証や確定利付を謳った預金もどき商品を商材にして投資詐欺を働くよりも、FX(外国為替証拠金取引)や暗号資産、CO2排出権など比較的リスクが高い投資対象を商材にした投資詐欺が増えています

もちろん、「投資」ですから値動きがあり、元本保証も謳っていません。

そのため犯行を働く側からすれば、「元本保証も確定利付も謳っていないのだから、どれだけお金を集めたって大丈夫でしょ」という理屈になるわけです。

そして何よりも巧妙なのは、利率は保証しないけれども、目標値は示していることです。

それも、実現可能と思わせる数字を提示してきます。

「FXの自動売買で月利5%を実現」といった謳い文句がそれです。

為替レートは日々、結構な値動きをするため、「優秀な自動売買システムなら月5%のリターンは簡単だろう」と思い込ませる心理テクニックが巧妙に仕掛けられています。

でも、よく考えてみてください。

月利5%ということは、年利に直すと60%です。

毎年60%ものリターンをコンスタントに積み重ねていける投資家は、まずいません。

特にここ数年、日本の株式市場だけでなく、世界的に株価が上昇トレンドにあるだけに、「月利5%の実現はたやすいこと」などと考える人がいたとしても不思議ではありませんが、そういう人こそ、この手の詐欺に引っかかってしまうのです。

■監修&執筆:鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)

岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て2004年に独立。投資信託、資産運用を中心に原稿を執筆するのとともに、単行本の企画、ライティングも行う。

株サイト比較ナビ 編集者

株サイト比較ナビ

2016年に本サイトを設立。専門性・独自性を軸に多種多様な金融商品・サービスを調査&比較し、初心者から中上級者までの投資家の方々へお役立ち情報を提供しています。

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