暗号資産、CO2排出権…「すごい」と思わせるワードが出てきたら金融詐欺⁉【連載第2回】

暗号資産、CO2排出権…「すごい」と思わせるワードが出てきたら金融詐欺⁉【連載第2回】

前回の記事「金融詐欺が急増!50代以下の相談件数が大幅増加した理由とは?」で取り上げた「令和6年における生活経済事犯の検挙状況等について」では、金融詐欺の被害額や相談件数といったデータだけでなく、検挙された事件の事例も掲載されています。

実際に、どのような金融詐欺の事件だったのかを把握するうえで役に立つ情報でもあります。

ファイナンシャルプランナーの肩書きを使った巧妙な金融詐欺も

令和6年の金融詐欺事件の実例を挙げると、以下のようになります。

「ファイナンシャルプランナーらによる社債購入名下の金融商品取引法違反等事件」

「店頭デリバティブ取引サイト運営会社によるバイナリーオプション取引に係る金融商品取引法違反等事件」

「海外に拠点を置く投資運用会社による外国為替証拠金取引への投資仲介名下の金融商品取引法違反事件」

「暗号資産の売買に係る資金決済法違反事件」

「資産運用会社によるCO2排出権取引名下の詐欺事件」

もちろん、ここに挙げたものは令和6年に検挙された金融詐欺事件の一部になるのですが、これを見てどのような印象を持たれたでしょうか?

「ファイナンシャルプランナー」「バイナリーオプション取引」「外国為替証拠金取引(FX)」「暗号資産」「CO2排出権取引」というように、どこからともなく「儲かるのではないか」、あるいは「信用できるのではないか」と思わせるワードが、騙しの仕組みの中に盛り込まれているのです。

たとえば「ファイナンシャルプランナーらによる社債購入名下の金融商品取引法違反等事件」は、東京都中央区のコンサルティング会社「ザ・グランシールド」の社長である中村佳敬や、同社にファイナンシャルプランナーとして所属していた鍵井チエら男女8人が共謀し、国の登録を受けていないのに、2020年4月~2023年1月頃、知人の男女16人に「年利20%。5年満期で元本を保証する」などとうたって、千代田区の債務保証会社であるトラステール社の社債を購入するように勧誘したものです。

参照:読売新聞オンライン「年利20%うたい無登録で社債購入勧誘の疑い、8人逮捕…1300人から80億円集金か

ファイナンシャルプランナーというと「お金の専門家」というイメージを持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ファイナンシャルプランナーはNPO法人である日本FP協会の認定資格、あるいは国家検定資格なので、「まさか、そのような資格を持っている人が詐欺を働くなんて…」と思っている人もいらっしゃるでしょう。

そこを逆手に取ったのが、この事件です。

金融詐欺師は「よく聞くけど、正確な内容はよくわからない」ワードを使ってくる

その他の事件を見ると、「バイナリーオプション取引」「外国為替証拠金取引」「暗号資産」「CO2排出権取引」といった、「いかにも儲かりそうな最新の金融取引」的なワードが並びます。

これが20年ほど前だと、「『タックスヘイブン』『ヘッジファンド』『プライベートバンク』が出てきたら(詐欺かも知れないので)要注意」などと言われていました。

2000年前後は、外為法(外国為替及び外国貿易法)の改正を受けて海外投資が注目された時期でもあります。

そのためタックスヘイブンやヘッジファンド、プライベートバンクなど、いかにも儲かりそうな海外投資スキームを騙った金融詐欺が横行したのです。

最近の犯罪事例もそれと同じです。

暗号資産やCO2排出権取引は一般のニュースでもよく流れてくる言葉ですし、バイナリーオプションや外国為替証拠金取引は、少し資産運用を齧った人なら必ず耳にしたことがあるはずです。

こうした今どきのワードを用いることによって、「何とか少しでも儲けたい」と考えている人たちの関心を惹こうとするのです。

また、こうしたワードを設定するに際して、より多くの人たちの関心を惹くためには、「よく聞くのだけれども、正確なところはあまりよくわからない」という程度のものを用いているのがミソです。

たとえば今の金利水準下で、「年利6%、元本保証の円建て預金です」と言われたら、誰でも「何かおかしい」と思うでしょう。

それは多くの人が預金という金融商品の性質を十分に理解しているからです。

でも、バイナリーオプションや外国為替証拠金取引、暗号資産、CO2排出権取引に関しては、その仕組みを完全に理解している人は少ないと思います。

ですが、何かと耳にする機会が多い、話題性のあるワードだけに、高い利回りを提示されたとき、「まあ、そういうこともあるのかな」と思い込んでしまうケースが多いようです。

ニュースで話題のワードを用いた投資商材は要注意

たとえば2024年10月に東京地裁から破産宣告を受けたエクシア合同会社は、定期的に高い配当が得られる社員権を購入させ、約9,000人から約850億円にも上る資金を集めて破綻しました。

参照:産経新聞「850億円巨額負債の投資会社「エクシア」 代表かけるんの黒い錬金術とマネーリテラシー

高い配当を得るための運用は、シンガポールの運用会社を用いて、外国為替証拠金取引などで運用するという触れ込みでしたが、外国為替証拠金取引はその時々の為替相場の動向によって、大きく損益がブレる投資手段です。

でも、「シンガポールの運用会社の優れた運用手法を用いた外国為替証拠金取引で運用する」などと言われると、なぜかそれを鵜呑みにしてしまう人が大勢いるのです。

暗号資産やCO2排出権取引も同じで、おそらく中身を熟知している人が少ないだけに、そこに騙しが介入する余地が生まれてくるのです。

とにかく、ニュースなどで取り上げられ、話題になっているワードを用いた投資商材には要注意です。

そして、これを書いている間にも、「金(GOLD)」を用いた詐欺事件が多発しているというニュースが流れています。

なぜ今、金取引に関する詐欺が増えているのかというと、これもニュースでよく流れてきますが、金価格が過去最高値を更新し続けているからです。

騙しの手口はさまざまで、資産を金地金に換えるように指示され、もともと持っていた資産を騙し取られる事件や、指示にしたがって金を売買すると利益が得られるといった類の話まで、手を変え、品を変えての詐欺事件が多発しています。

この記事をご覧いただいた機会にぜひ注意してください。

「国策」を利用した金融詐欺に気をつけて!

このように、時代の変化に応じてさまざまな詐欺商材やワードが登場してくるわけですが、その流れのなかで注意したいのが、「国策」です。

前述した改正外為法の施行は1998年で、この時は海外の金融機関に口座を開設することが自由化されたり、海外の証券会社との直接取引が解禁されたりしました。

これによって海外投資に対する関心が高まりましたが、同時に海外投資をうたい文句にした詐欺事件も多発しました。

たとえば当時、G&G事件という海外口座詐欺事件がありましたが、これはニューヨークに拠点を置くG&G社が運用するヘッジファンドを直接購入してもらえば、元本保証のうえに確定利回りを出せるという触れ込みでした。

参照:Finasee「なぜ詐欺師の逮捕に時間がかかる? ジレンマ残る「G&G事件」の結末

また、米国の医療保険請求債権を投資対象にし、元本保証と確定利回りを実現するという触れ込みで1,300億円もの被害を出したMRIインターナショナル事件もありました。

参照:Finasee「14年間で約8000人の被害…巨額詐欺事件で悪用された“ある投資手法”

彼らには直接取材をしましたが、その際にはいずれも、「改正外為法によって海外の金融商品が自由に買えるようになりました」と言っていたことを覚えています。

まさに改正外為法の施行という国の政策を利用した詐欺事件といってもよいでしょう。

そして今はどうかというと、岸田文雄元首相がリードして提唱している「資産運用立国」や「資産所得倍増プラン」によって、国を挙げて個人の資産運用が推奨されています。

こういう時代だからこそ、注意が必要です。

折しも米国株も日本株も株価は史上最高値を更新していますし、資産運用の対象も株式や債券、投資信託だけでなく、暗号資産や外国為替証拠金取引、金、不動産など多岐にわたり、老後の資産形成に対する関心も高まっています。

金融詐欺を目論んでいる輩たちは、この状況をビジネスチャンスの到来と思っているかもしれません。

だからこそ金融詐欺の手口を理解して、騙されないようにする必要があるのです。

■監修&執筆:鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)

岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て2004年に独立。投資信託、資産運用を中心に原稿を執筆するのとともに、単行本の企画、ライティングも行う。

株サイト比較ナビ 編集者

株サイト比較ナビ

2016年に本サイトを設立。専門性・独自性を軸に多種多様な金融商品・サービスを調査&比較し、初心者から中上級者までの投資家の方々へお役立ち情報を提供しています。

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