近年、日本の投資業界において個人投資家の存在感が高まっています。
NISA(ニーサ/少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)といった制度の拡充や金融教育の普及により、多くの人が資産形成に取り組んでいます。
そうした環境の中で着実に資産を築き上げ、「億り人(おくりびと)」と呼ばれる成功を収めた個人投資家の活躍が注目を集めています。
本記事では、成功を収めている個人投資家の中でも特に印象的な軌跡を歩んできた堀内剛志(ほりうち・たけし)氏に焦点を当てたいと思います。
これまでの堀内氏の投資人生と、株式投資で経験してきた成功と挫折について紹介していきます。
資金30万円で株式投資をスタート
堀内氏の個人投資家としての物語は、20代から始まります。
某メーカーの会社員として働きながら将来への不安を抱くなか、堀内氏は株式投資の世界に足を踏み入れます。
投資資金30万円で株式投資デビュー
投資資金は30万円。決して潤沢とはいえない資金からのスタートでした。
投資に関する知識や経験が十分ではなかった当時の堀内氏ですが、持ち前の研究熱心な性格を発揮し、上場企業の決算書を読み込んだり、業界の動向を分析するなど、株式投資の勉強に真剣に取り組みました。
このような地道な努力が、堀内氏の投資成功の礎となるのです。
初めて投資したのは金融株。資産を2倍以上に増やす成功を収める
堀内氏が最初に購入したのは、とある金融機関の株式だったといいます。
「当時の金融業界は規制緩和や業界再編の波に乗り、株価の変動も比較的激しい時期でした。そこで金融株にチャレンジしてみようと思い立ちました」
堀内氏は綿密に企業分析と市場動向の読み取りを行うことで、売買のタイミングも絶妙だったためか、2倍以上の利益を上げることに成功しました。
つまり、30万円の資金が一気に60万円以上にも増えたわけです。
「ビギナーズラックだったと思いますが、この成功体験が株式投資に対する自信を深めるとともに、情熱を育むこととなりました」と堀内氏は振り返ります。
ITバブル崩壊を事前察知!大相場で勝利をもぎ取る
1990年代後半から2000年初頭にかけて、日本ではインターネット関連銘柄、いわゆるハイテク株への投資熱が高まり「ITバブル」が発生。多くの投資家がハイテク株に過熱投資を行っていました。
そのような状況下、堀内氏は過熱するハイテク株を冷静に観察していました。
ハイテク銘柄の株価と実体価値が乖離していることに注目
「注目されているIT企業の業績や将来性を分析した結果、その多くの企業の株価が実体価値を大きく上回っていることが明らかになってきたのです」
市場全体で楽観的な見通しが支配するなか、堀内氏はITバブルへの警戒心を崩しませんでした。
堀内氏は独自の分析に基づいてITバブル崩壊を予測し、それに備えた投資戦略を立てました。
ハイテク株の空売りとバリュー株への投資を敢行
過大評価されているハイテク株の空売りを仕掛けるとともに、相対的に割安となっているバリュー株への投資を積極的に推し進めました。
ほどなくして堀内氏の投資戦略は見事的中することになります。
2000年から2001年にかけてITバブルが崩壊すると、多くの投資家が損失を被るなか、堀内氏は一千数百万円もの利益を上げることに成功。個人投資家としての注目される地位を確立するきっかけにもなりました。
「ITバブル崩壊における投資戦略の成功要因は、市場の熱狂や群集心理に惑わされることなく、自分なりの分析と判断を冷静に貫いたことだと思います」と堀内氏は言います。
「億り人」達成!専業投資家への転身を決意
ITバブル崩壊での成功を皮切りに、堀内氏は株式投資での実績を着実に積み重ねていきます。
株式投資を始めて十数年で資産1億円を突破
堀内氏は高配当株やバリュー株の発掘など、堅実な投資手法を基本的な軸としながらも、確信を持てる投資機会では大胆な投資を行う「普段は堅実に、時には大胆に」という投資スタイルを確立していきます。
そして株式投資を始めてから十数年後、堀内氏はついに資産1億円を突破、いわゆる「億り人」の仲間入りを果たしました。
保有資産が1億円を超えたことで、堀内氏は安定した会社員生活を捨てて、個人投資家一本の道を選ぶ決断をします。
専業の個人投資家として投資に集中できる環境を獲得
「会社を辞めることにリスクが伴うことは理解していました。しかし、長年にわたって投資手法を磨き上げられたおかげで、変化する市場環境においても安定的に利益を上げられる自信があったので、一大決心をしました」
会社を退職し、専業の個人投資家として新たな人生をスタートした堀内氏は、これまで以上に投資に集中できる環境を手に入れました。
会社員生活での時間的な制約から解放されたことで、より深い企業分析や市場研究に取り組むことができるようになり、投資判断の精度はさらに向上していったといいます。
投資家人生最大の試練…リーマンショックでの挫折
2008年9月、アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとした世界的な金融危機「リーマンショック」が起こりました。
それまで順調に成長を続けてきた世界経済に大きな打撃を与え、世界の株式市場は荒れに荒れ、株価は総じて大幅に暴落しました。
リーマンショック時の相場では従来の投資手法が通用しない
未曾有の金融危機は堀内氏に大きな試練と挫折を与えました。
リーマンショックのような異常な市場環境において、堀内氏がこれまで培ってきた投資手法が通用しなかったのです。
堀内氏は、リーマンショック時の株価下落をあくまでの一時的な調整と捉え、底値だと思い込み積極的に株の買い増しを断行しました。
しかしその後も株価下落は止まらず、大きな含み損を抱えることとなったのです。
謙虚な気持ちと徹底したリスク管理が必要であることを学ぶ
「あの時期はこれまでの自身の成功体験にとらわれすぎていました。過去の成功はあくまで過去のもの。市場の急激な変化に冷静かつ適切に対応できなかったと反省しています」。
堀内氏は自身の失敗を冷静に分析し、何が間違っていたのかを徹底的に検証したところ、以下の2つの教訓を学んだといいます。
1.過度な自信は禁物。常に謙虚な姿勢で市場と向き合うこと
2.想定外の市場環境では失敗する可能性は高まる。徹底したリスク管理が重要である

投資手法を徹底的に見直し見事復活を遂げる
リーマンショックでの失敗を受けて、堀内氏はこれまでの投資手法を根本から徹底的に見直しました。
まずは投資手法の見直しを通じて、新たな投資哲学を確立しました。
厳格なリスク管理を行う新たな投資哲学を確立
それは、「普段は堅実に、時には大胆に」という従来の基本方針を維持しながらも、より厳格なリスク管理を組み込むというものでした。
短期的な利益追求よりも長期的な視点での資産形成により重点を置くことにしたのです。
市場の変動に対してより保守的なアプローチを採用し、確実性の高い投資機会にのみ資金を投入するという方針を定めました。
高配当株・バリュー株投資をさらに徹底化
さらに堀内氏は、高配当株やバリュー株への投資をさらに徹底し、長期的に安定したリターンを獲得することを決断しました。
高配当株投資では、配当利回りの高い優良銘柄を厳選して投資し、定期的な配当収入を確保しながら株価上昇も狙う戦略を採用しました。
バリュー株投資では、市場で過小評価されている企業を発掘して投資し、本来の企業価値が市場で認識されるまで忍耐強く銘柄を保有し続けるアプローチを実践しました。
以上に述べた新たな投資手法は功を奏し、堀内氏はリーマンショック後からわずか数年で損失を取り戻し、資産を大きく増やすまで復活を遂げたのです。
【まとめ】自身の投資体験談と教訓を届ける立場に
堀内氏は現在も積極的に投資活動を行うとともに、最近では自身の投資体験談やそこから得られた教訓について話すオンラインセミナーにも出演しています。
セミナーでは若い世代の個人投資家に対して、特に以下の3つのメッセージを意識して繰り返し話すようにしているといいます。
若い個人投資家に届けたい3つのメッセージ
【その1】「始めること」と「続けること」が大事
「投資は一攫千金を狙うものではなく、コツコツと継続することで成果を上げるものです。私も30万円という小さな資金から始めましたが、継続することで大きな資産を築くことができました。大切なのは『始めること』と『続けること』です」。
【その2】失敗を恐れる必要はないが、失敗から学ぶのが大切
「失敗を恐れる必要はありませんが、失敗から学ぶことが重要です。私もリーマンショック時に大きな失敗をしましたが、その経験があったからこそ、より良い投資家になることができました。失敗は成長の機会と捉えてください」。
【その3】投資は長期的な視点で臨む
「投資には長期的な視点を持つことが何よりも大切です。市場は短期的には予測困難ですが、長期的には企業の成長とともに上昇する傾向があります。時間を味方につけることで、投資の恩恵を受けることができると私は考えています」。
正しい投資のアプローチを模索し、不断の努力を忘れない
投資資金30万円から「億り人」にたどり着いた堀内氏ですが、その投資の判断と行動がいつも成功につながっていたわけではありません。
成功と失敗を繰り返し、常に学び続け、投資手法を改善し続けた結果、現在の地位を築き上げることができました。
堀内氏という個人投資家の物語は、投資の世界において貪欲に知識を得て、努力を継続し、徹底したリスク管理を行うことで、成功を収める可能性を高められることを証明しているといえるのではないでしょうか。
最後に堀内氏は、以下の言葉で締めくくってくれました。
「投資は決して簡単なものではありませんが、正しい投資のアプローチを模索し、不断の努力を忘れないことで、道は必ず開けるはずだと信じていますよ」
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