航空株は旅客需要の回復やインバウンドの増加を背景に、業績の改善が続いています。
一方で、燃料費となる原油価格の動向や為替の変動など、外部環境の動向によって株価が大きく上下する特徴を持っています。
この記事では、航空株への投資に必要な基礎知識に加えて主要5銘柄、さらには株主優待の解説も行います。
この記事の重要なポイントは以下の3点です。
- インバウンド需要の拡大による中長期的な業績回復が継続
- 株価を動かす要因は、旅行客数に加えて原油高や為替変動
- 主要銘柄はANAホールディングス、日本航空、スカイマーク、スターフライヤー、日本空港ビルデング
航空株とは?投資する前に知っておきたい基礎知識
航空株とは、人や物資を飛行機で運ぶ航空運送事業を展開する企業の株式をいいます。
私たちの生活に身近な移動手段を支えるインフラ企業であり、景気の動向を敏感に反映する特徴を持っています。
航空会社の収益源
航空会社の主な収益源は、旅客が支払う運賃と貨物の輸送報酬です。
航空会社は路線ごとに飛行機を飛ばし、座席がどれだけ埋まるかによって利益率が大きく変動します。
定期的な運航を維持するために、機体の購入費や整備費、人件費などの固定費が常に発生するビジネスモデルです。
そのため、乗客数が一定水準を超えると利益が急激に増えるレバレッジ特性を持っています。
大手航空会社とLCC(格安航空会社)の違い
日本の航空業界は、
- フルサービスを提供する大手航空会社
- 効率化を突き詰めたLCC(格安航空会社)
に大別されます。
大手航空会社は手厚いサービスと豊富なネットワークを強みとし、ビジネス客から観光客まで幅広い層を顧客にしています。
一方でLCCは機内のサービスを有料化し、使用する機体を統一することで運航コストを最小限に抑えています。
航空株は航空会社の株式だけにとどまらない
さらに、航空業界の投資対象は、飛行機を飛ばす航空会社だけにとどまりません。
- 空港の旅客ターミナルビルを運営する企業
- 機内食を製造する企業
- 航空機の整備を専門に行う企業
なども航空関連株に含まれます。
航空会社の業績が落ち込んでいる局面でも、空港の利用者が増えれば利益を伸ばせる関連企業が存在します。
航空株の上昇と下落を左右する主な要因は?原油高次第?
航空株の株価は、企業の自助努力だけでなく、マクロ経済や国際情勢などの外部要因に大きく左右されます。
特に利益を圧迫するコスト要因と、売上を伸ばす需要要因のバランスが株価の方向性を決定します。
ここでは、株価を動かす代表的な3つの要素について詳しく解説します。
①インバウンド需要と国内旅行客の増減
航空株にとって最大の買い材料となるのが、国内外の旅行客の増加です。
特に日本を訪れる外国人観光客であるインバウンド需要は、単価の高い国際線旅客収入を大きく押し上げます。
観光庁が発表する訪日外国人客数や、航空各社が毎月開示する利用実績データは、投資家がチェックしたい指標です。
②原油価格の変動が航空株の業績に与える影響
航空会社の経営において、燃料費は営業コストの大きな割合を占めます。
そのため、原油価格の上昇は航空株の下落理由として最も頻繁に挙げられる要因です。
原油価格が高騰すると、燃油サーチャージとして運賃に転嫁されるものの、すべてのコストを補えるわけではありません。
原油価格の指標であるWTI原油先物などの値動きは、航空株の業績見通しを占う上で無視できない要素です。
③為替レートの円高や円安によるコストの増減
為替市場の動向も、航空株の業績に二面性の影響を与えます。
航空各社は燃料の購入や航空機のリース料を米ドル建てで支払うことが多いため、円安はコストの増加につながります。
しかし、大幅な円安は外国人観光客にとって日本への旅行が割安になるため、インバウンド需要を強力に呼び込む側面もあります。
航空株におけるコスト面でのマイナスと、需要面でのプラスのどちらが勝るかを慎重に評価しなければなりません。
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航空株の株主優待はなぜ人気?
多くの個人投資家が航空株を選ぶ理由の1つに、魅力的な株主優待制度があります。
日本の主要な航空会社は、保有株数に応じてさまざまな特典を株主に提供しています。
航空株の株主優待として最も有名なのが、国内線の片道運賃が割引になる優待券です。
お盆や年末年始などの繁忙期でも利用できる場合が多く、旅行や帰省の出費を大幅に抑えることができます。
航空株の今後の見通しと成長性
国際航空運送協会(IATA)によると、2025年の世界の航空旅客需要は過去最高を更新しました。
特にアジア圏を中心とした経済発展に伴い、海外旅行を楽しむ中間層が急増しています。
日本へのアクセスを求める国際線需要は、中長期的に見ても堅調であると考えられます。
航空各社が機体を大型化したり、新しい路線を開拓したりすることで、さらなる売上の拡大が期待できます。
一方で、オンライン会議の定着によってビジネス目的の出張需要は過去の水準に戻りにくいという見方もあります。
企業の経費削減意識も相まって、出張の頻度が抑えられているのは航空会社にとって懸念材料です。
また、今後の大きな課題として、国際的な環境規制への対応が挙げられます。
航空業界は二酸化炭素の排出量を削減するため、SAF(持続可能な航空燃料)の導入を迫られています。
SAFという新型燃料は従来のジェット燃料よりも生産コストが高く、長期的には航空企業の利益を圧迫する可能性があります。
有望な航空銘柄を見つけるためのチェックポイント
航空会社の稼働状況を把握するために、「座席利用率」という指標があります。
座席利用率とは、提供した座席数のうち、実際に乗客が座った割合を示すもので、企業の収益性に直結するため、ぜひチェックしておきたいポイントです。
また、航空業は機体の購入などで巨額の負債を抱えやすい典型的な装置産業です。
不況に見舞われた際に航空会社が持ちこたえられるかどうかは、財務健全性の高さにかかっています。
貸借対照表の自己資本比率を確認し、十分な純資産を確保しているかチェックしましょう。
さらに、原油高のリスクに対抗するためには、コストを顧客に負担してもらう仕組みが正常に機能しているかが重要です。
運賃を引き上げても客足が遠のきにくい、強力なブランド力や独占路線を持つ航空企業は優位性があります。
日本の主要航空株5銘柄を徹底分析
日本の株式市場に上場している航空関連の代表的な5銘柄について、それぞれの特徴と強みを個別に解説します。
それぞれの企業が異なる強みを持ち、投資対象としての魅力もさまざまです。
ANAホールディングス(9202):国内最大手の規模と国際線の成長力
| 株価 | 2,839円 |
| 時価総額 | 1.3兆円 |
| 配当利回り | 2.11% |
| PER(連) | 13.42倍 |
| PBR(連) | 0.99倍 |
| ROE(連) | 12.90% |

東証プライム市場 出所:Yahoo!ファイナンス 2026年6月12日時点
全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは、国内線および国際線ともに国内最大のシェアを誇る航空業界のリーディングカンパニーです。
豊富な機材数と世界的な航空ネットワークを活かし、旺盛なインバウンド需要を最も大きな規模で取り込んでいます。
また、LCCのピーチ・アビエーションを子会社に持ち、格安旅行需要も網羅するバランスの良い事業構造が強みです。
株主優待は、100株以上の保有で国内線の運賃が5%割引になる株主優待が年に2回発行されます。
しかし、圧倒的な規模がリスクの裏返しでもあります。
ANAホールディングスは航空機や設備への巨額の投資を続けており、競合他社に比べて負債総額が大きい特徴を持っています。
そのため、金利が上昇した際の利払い負担が増加しやすい構造となっています。
日本航空(9201):高い財務健全性と手厚い株主還元策
| 株価 | 2,626円 |
| 時価総額 | 1.1兆円 |
| 配当利回り | 3.66% |
| PER(連) | 10.26倍 |
| PBR(連) | 1.02倍 |
| ROE(連) | 12.15% |

東証プライム市場 出所:Yahoo!ファイナンス 2026年6月12日時点
日本航空は、かつての経営破綻を経て構築されたスリムで強固な財務体質が最大の特徴です。
自己資本比率が業界内で高水準を維持しており、不況に対する耐性が強い企業として評価されています。
株主還元に積極的な姿勢を示しており、配当金と株主優待の両面から投資家にメリットを提供しています。
高品質なサービスを提供する航空会社としての評価も高く、顧客ロイヤルティの高さが安定した収益を支えています。
株主優待は、100株以上の保有で国内線の普通運賃が50%割引になる株主割引券が贈呈されます。
一方で、非航空事業の拡大を急いでいますが、マイル・金融以外の柱が育っておらず、依然として航空旅客の動向に業績が依存している点には注意が必要です。
スカイマーク(9204):独自路線を展開する第三極の航空会社
| 株価 | 401円 |
| 時価総額 | 241億円 |
| 配当利回り | ー |
| PER(連) | 30.15倍 |
| PBR(連) | 0.71倍 |
| ROE(連) | 5.36% |

東証グロース市場 出所:Yahoo!ファイナンス 2026年6月12日時点
スカイマークは、大手2社に次ぐ第三極の航空会社として、羽田空港の発着枠を多く保有している点が強力な強みです。
大手よりも割安な運賃を設定しつつ、LCCよりも手厚いサービスを提供するという独自のポジションを確立しています。
主要幹線を効率よく運航することで高い座席利用率を維持し、無駄のない筋肉質な経営を行っています。
株主優待に関して、スカイマークは独自のスタンスをとっています。
株式を保有していても株主優待券の発行を行っておらず、専用の株主優待割引運賃も存在しません。
その代わり、事前予約による各種割引運賃をはじめから低価格で幅広く提供しており、すべての利用者に一律で還元する方針をとっています。
スカイマークの最大のリスクは、羽田空港の発着枠に依存しすぎている点にあります。
この貴重な枠を維持するためには、高い運航率や安全性に関する厳しい基準をクリアし続けなければなりません。
スターフライヤー(9206):高い顧客満足度を誇る九州拠点の航空会社
| 株価 | 1,957円 |
| 時価総額 | 74億円 |
| 配当利回り | ― |
| PER(連) | 12.34倍 |
| PBR(連) | ― |
| ROE(連) | 7.55% |

東証スタンダード市場 出所:Yahoo!ファイナンス 2026年6月12日時点
スターフライヤーは、北九州空港を拠点に黒を基調としたスタイリッシュな機体と高い快適性を提供する航空会社です。
全席に革張りシートや個人モニターを配置するなど、他社との徹底的な差別化を図り、顧客満足度調査で常に高い評価を得ています。
北九州から羽田への路線など、特定のニーズが極めて高いルートに特化することで安定した顧客層を確保しています。
株主優待は、100株以上の保有で片道1区間の国内定期路線運賃が50%割引となる株主優待券が、半期ごとに3枚(年間で計6枚)贈呈されます。
全席にコンセントが完備された同社の快適なフライトを頻繁に利用する九州圏のユーザーにとっては、極めて実用性の高い優待内容となっています。
ただし、特定の地域や路線に特化していることは、経営のボラティリティを高める要因になります。
また、機材数が少ないため、1機の機体トラブルや悪天候による欠航が全体のスケジュールに及ぼすダメージが大きく、大手に比べて業績が突発的に悪化しやすいリスクを抱えています。
日本空港ビルデング(9706):羽田空港の物販と施設管理を担う関連銘柄
| 株価 | 4,701円 |
| 時価総額 | 4,378億円 |
| 配当利回り | 2.02% |
| PER(連) | 18.03倍 |
| PBR(連) | 2.07倍 |
| ROE(連) | 14.65% |

東証プライム市場 出所:Yahoo!ファイナンス 2026年6月12日時点
日本空港ビルデングは、羽田空港の旅客ターミナルビルを建設・管理し、物品販売なども行うユニークな航空関連銘柄です。
自社で飛行機を保有しないため、原油高や航空機リース料といった航空会社特有のコストリスクから免れています。
羽田空港の利用者が増えれば増えるほど、館内での買い物や飲食、施設利用料を通じて利益が積み上がる仕組みです。
特に国際線ターミナルの免税店売上はインバウンドの恩恵をダイレクトに受けるため、高い収益性を誇ります。
株主優待は、100株以上の保有で空港内の指定店舗で使える「優待買物券(1,000円相当)」が年1回贈呈されます。
さらに、100株以上の保有で羽田空港や成田空港などの空港内免税店で利用できる「10%割引券」が5枚手に入ります。
加えて、3年以上の長期保有を満たすと追加で進呈される長期優遇制度もあり、空港での買い物が多い旅行好きにとって、価値の高い内容です。
リスクは、利益の大部分が羽田空港の国際線旅客、特に外国人観光客の購買力に依存している点です。
世界的な景気後退や為替が急激に円高へ振れた場合、免税店での爆買い需要が冷え込むおそれがあります。
航空株に投資する際に知っておくべき3つの注意点
航空株への投資には多くのメリットがある反面、リスク管理を怠ると大きな損失を被る危険性もあります。
業界特有の構造的な弱点を理解し、適切な投資タイミングを計ることが失敗を防ぐカギとなります。
投資家が警戒すべき3つの具体的な注意点を整理します。
①固定費の高さがもたらす業績のボラティリティ
航空会社は機体の維持費や空港の使用料、専門性の高い人材の人件費など、飛行機を飛ばさなくても多額の固定費が発生します。
そのため、感染症の流行や国際紛争によって一時的に旅客数が激減した際、赤字額が大きくなりやすい性質があります。
業績の振れ幅が他の業種に比べて大きいため、好況時の利益だけに目を奪われず、不況時のリスクを想定しておくことが大切です。
②世界的な景気後退が旅客需要に与える影響
旅行や出張は、個人の可処分所得や企業の業績が悪化した際に最も早く削減されやすい対象です。
世界的な景気後退の兆候が見られる局面では、航空株の売り圧力が強まる傾向があります。
インフレによる物価高が消費者の旅行意欲を減退させるリスクにも目配りしなければなりません。
③原油高が長期化した際の業績下振れリスク
一時的な原油価格の上昇であれば燃油サーチャージで対応可能ですが、原油高が数年単位で長期化した場合は深刻なリスクとなります。
運賃にコストが上乗せされ続けると、旅行客が割高感を覚えて旅行を控えるようになるという需要の減退を招きます。
エネルギー市場の需給関係が緊迫している時期は、航空株への投資比率を抑えるなどの柔軟な対応が賢明です。
【まとめ】航空株は特徴を理解し見通しを分析した上で投資判断
航空株はインバウンドの復活という強力な追い風を受けつつも、原油価格や為替といった不確実な要素と常に隣り合わせのセクターです。
個々の銘柄の強みや財務状況を分析し、株主優待の利用しやすさも考慮に入れることで、総合的な投資成果を期待できます。
リスク要因を完全に排除することはできませんが、入念なリサーチを行うことで、不利な局面を避け効率的な投資が可能となるでしょう。
※本記事内で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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