貸株サービスとは、保有している株式を証券会社に貸し出すことで金利収入を得られる仕組みのサービスです。
しかし、金利が得られるというメリットの裏には、税金や株主優待の扱いで不利になるなどのデメリットも存在します。
貸株サービスを利用する際は、メリットとデメリットを正しく理解し、自身の投資スタイルに合っているかを見極めることが大事です。
本記事では、貸株の具体的なデメリットと、それを回避するための設定方法について詳しく解説します。
■この記事のまとめ
- 投資家は貸株サービスで銀行預金の金利よりも高い収益を得られる可能性あり
- 貸株サービスによっては、株主優待や議決権を自動で取得できる設定(コース)もある
- 貸株サービスの利用で配当金の税制優遇が受けられない可能性もある
貸株サービスとは?株を貸して金利を得る仕組みを解説

引用:SBI証券「貸株」
貸株サービスとは、投資家が保有する株式を証券会社に貸し出し、その対価として金利(貸株料)を受け取れるサービスです。
証券会社は、投資家から借りた株式を、信用取引の売り(空売り)をしたい他の投資家に貸し出すことなどで活用します。
投資家は、株を保有し続けているだけで、銀行預金の金利よりも高い収益を得られる可能性があります。
SBI証券や楽天証券、松井証券、マネックス証券など多くのネット証券で提供されており、簡単な手続きでこのサービスの利用を開始できます。
知っておくべき貸株サービスの3つのデメリット
貸株サービスは金利収入が得られる魅力的な仕組みですが、利用する前に必ず理解しておくべきデメリットが存在します。
特に重要なのは以下の3点です。
- 1.株主優待・長期保有特典の権利
- 2.配当金の税制上の扱い
- 3.万が一の際の資産保護
これらのリスクを知らないまま利用すると、得られる金利以上の損失を被る可能性もゼロではないため、注意が必要です。
デメリット①:株主優待や長期保有特典の権利を失うことがある
貸株サービスを利用すると、株式の所有権が一時的に証券会社へ移転します。
そのため、株主優待や議決権の権利が確定する日(権利確定日)に株式を貸し出していると、株主名簿に名前が記載されず、原則としてこれらの権利を受けられません。
ただし、貸株サービスによっては、株主優待や議決権を自動で取得できる設定が用意されている場合があります。
長期間同じ銘柄を保有することで優待内容がグレードアップする「長期保有特典」を設けている企業の場合、貸株サービスの設定によっては保有期間がリセットされ、特典の対象から外れてしまうリスクがあります。
しかし、「権利取得優先」や「株主優待優先」といった設定で貸株サービスを利用している場合、権利確定日に株式が返却されるため、権利取得に影響がないケースもあります。
デメリット②:配当金の税制優遇が受けられない可能性がある
貸株サービスを利用中に配当金の権利確定日を迎えると、配当金そのものではなく「貸株配当金相当額」として受け取ることになります。
貸株配当金相当額の場合、税法上「配当所得」ではなく「雑所得」として扱われます。
雑所得の税区分の変更は、投資家にとっては不利に働く可能性があります。
雑所得の場合、配当所得であれば可能な他の株式の譲渡損失との損益通算ができなくなります。
また、配当金であれば適用される「配当控除」という税制優遇措置が受けられません。
配当控除とは、配当所得に対して課される所得税や住民税を一定額控除できる制度です。
配当控除の優遇が適用されないため、課税所得が多い人ほど、通常の配当金として受け取る場合に比べて税負担が重くなる可能性があります。
給与所得者の場合、貸株金利と配当金相当額などを合わせた雑所得の合計が年間20万円以下であれば所得税の確定申告は原則不要ですが、20万円を超えると確定申告が必要です。
なお、20万円以下であっても住民税の申告は別途必要となる点には注意しましょう。
デメリット③:投資者保護基金の保護対象にならない
通常、証券会社に預けている株式は分別管理されており、万が一証券会社が倒産しても投資者保護基金によって1,000万円まで保護されます。
しかし、貸株サービスで貸し出している株式は、投資者保護基金の保護対象外となります。
これは、貸株サービスが「消費貸借契約」であり、株式を貸し出している間は、株式の所有権が証券会社に移転し、投資家側は「株を返してもらう権利(無担保債権)」を保有する状態になるためです。
そのため、証券会社が倒産した際には、貸し出した株式が返還されないというリスクがあります。
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デメリットだけじゃない!貸株サービスのメリットを紹介
ここまで解説したように貸株サービスには注意すべき点がありますが、もちろんデメリットばかりではありません。
特に、株式を有効活用して収益性を高めたい投資家にとって貸株サービスは魅力があります。
ここでは、貸株サービスを利用することで得られる具体的なメリットについて紹介します。
メリット①:保有しているだけで金利収入が自動で入ってくる
貸株サービスの最大のメリットは、保有している株式を貸し出すだけで、金利収入を自動的に得られる点です。
特に売買の予定がない、いわゆる「塩漬け株」になっている銘柄でも、貸し出すことで新たな収益源となります。
貸株サービスの金利は銘柄によって異なります。
一般的な銘柄だと年率0.1%程度ですが、市場での需要が高い銘柄や品薄株には、年率10%を超えるような高いボーナス金利が設定されることもあります。
メリット②:貸し出している間も好きなタイミングで株を売却できる
株式を貸し出している間も、その株式はいつでも自由に売却できます。
売却注文を出すと、自動的に貸株の契約が解除され、通常の株式と同様に取引が実行されます。
特別な手続きは不要で、貸し出していることを意識せずに株式の取引が可能です。
例えば、貸株サービスを利用しているからといって、株価の上昇局面で売り時を逃す心配はありません。
流動性を維持したまま貸株サービスで金利収入を得られるのは、大きな利点です。
貸株のデメリットを回避して賢く活用する2つの設定方法
貸株サービスのデメリットは、証券会社が提供する便利な設定機能を活用することである程度回避できます。
特に「株主優待」や「配当金」に関するデメリットは、自動設定を利用することで、権利を確保しながら金利収入を得ることが可能です。
貸株サービスを賢く活用するための具体的な設定方法を2つ紹介します。
①株主優待や議決権の権利を自動で確保する設定を使おう
仕組みを正しく理解していれば、「自動取得サービス(自動取得設定)」を利用することで回避できます。
主要なネット証券では、自動取得サービスの設定をオンにしておくと、権利確定日になると自動的に株式が返却され、株主の権利が確保される仕組みになっています。
コースとして「優待優先」「金利優先」「配当優先」などを選択できる場合もあり、自分の投資方針に合わせて柔軟に設定を変更することが可能です。
■主なネット証券の貸株の自動取得サービス
| 証券会社名 | 自動取得サービスの内容 |
| SBI証券 | ■配当・優待優先コース 配当金と株主優待の権利を両方とも受け取れる ■優待優先コース 株主優待の権利を優先的に受け取れる ■金利優先コース 配当金や株主優待よりも金利を優先して受け取れる |
| 楽天証券 | ■金利優先 貸株を継続し、できるだけ多くの貸株金利を受け取りたい方向け ■株主優待優先 貸株しながら優待も欲しい方向け ■株主優待・予想有配優先 貸株しながら優待も配当金も欲しい方向け |
| 松井証券 | ■貸株金利優先 権利確定日であっても貸株を継続し、貸株金利を受け取り続けられる ■株主優待優先 株主優待を配布する銘柄について、権利確定日前に貸株を解除して株主優待を受けられる ■権利取得優先 権利確定日前は必ず貸株を解除することで、株主優待と配当金の両方を受け取れる |
| マネックス証券 | ■配当金自動取得サービス ■株主優待設定 株式を貸出していても、株主優待・配当金の権利を自動で取得可能 (配当金自動取得サービスと株主優待設定はそれぞれで手続きが必要) |
②長期保有特典を狙う銘柄は貸し出さない設定も可能
長期保有特典を設けている銘柄については、個別に貸株の対象から外す設定が有効です。
全ての保有銘柄を一括で貸し出すのではなく、銘柄ごとに貸し出すか貸し出さないかを選択できる機能があります。
長期保有特典を確実に狙いたい銘柄だけを対象外に設定することで、特典を維持しながら他の銘柄で金利収入を得られます。
なお、自動取得サービスを利用して権利日に株を戻しても、企業によっては株主名簿の更新タイミング等の理由で「長期保有特典」の対象外(保有期間がリセット)になってしまうケースがあります。
長期特典を絶対に維持したい銘柄は、最初から貸株の対象外にしておくのが安全です。
【タイプ別】貸株サービスを利用すべき?判断基準を解説
貸株サービスを利用すべきかどうかは、投資家個人の投資スタイルや目的によって異なります。
貸株サービスのメリットとデメリットを理解した上で、自分の状況に合っているかを判断することが大切です。
ここでは、貸株サービスの利用がおすすめな人と、慎重に検討すべき人の特徴をそれぞれ解説します。
貸株サービスの利用がおすすめな人の特徴
貸株サービスは、保有している株式を証券会社に貸し出すことで金利収入を得られるサービスです。
貸株サービスは、主に、
- 長期保有の予定がある株式を有効活用したい投資家
- 金利収入でリターンを増やしたい投資家
におすすめといえます。
多くの証券会社が提供する「自動優待取得サービス」を利用すれば、株主優待を受け取ったり、配当金相当額(雑所得)を得たりしながら貸株サービスを利用することも可能です。
貸株サービスの利用は慎重に考えるべき人の特徴
株主優待や長期保有特典を投資の主な目的としている人は、貸株サービスの利用を慎重に検討するのがよいでしょう。
権利を失うリスクがあるため、金利収入よりも優待の価値が高い場合は利用しない方が賢明です。
また、配当控除を適用して節税効果を最大化したい高所得者も、雑所得になるデメリットが大きくなる可能性があります。
なお、NISA口座での取引は貸株サービスの対象外です。
1株単位の単元未満株や一部の米国株も貸株サービスの対象外となることが多いです。
貸株サービスに関するよくある質問
ここでは、貸株サービスに関して投資家から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
貸株サービスの利用を検討する上で知っておきたいポイントを解説します。
Q1. 貸株で得た利益は確定申告が必要になりますか?
A.雑所得が合計20万円以下であれば、所得税の確定申告は原則不要です。
ただし、住民税については20万円以下であってもお住まいの自治体への申告が必要となる点に注意してください。
なお、医療費控除などで確定申告を行う場合は、20万円以下であっても申告する必要があります。
Q2. 貸株の金利はどのくらいもらえるものですか?
A.貸株の金利は、銘柄の需要や証券会社によって大きく異なります。
多くの銘柄は年率0.1%程度に設定されていますが、信用取引の売り需要が高い人気の品薄株などでは、年率10%を超える「ボーナス金利」が適用されることもあります。
貸株の金利は日々変動するため、定期的に確認することをおすすめします。
Q3. NISA口座の株式を貸し出すことはできますか?
A.いいえ、NISA(少額投資非課税制度)口座で保有している株式は、貸株サービスの対象外です。
NISA口座のメリットである非課税の恩恵を受けながら、貸株で金利収入を得ることはできません。
もしNISA口座の株式を貸し出したい場合は、一度NISA口座内でその株式を売却し、改めて特定口座などの課税口座で買い直す必要があります。
なお、NISA口座から課税口座へ直接株を移管することは制度上できません。
【まとめ】貸株の活用は値上がり益重視か優待・配当重視かを見極めて
貸株サービスは、保有株式から金利収入を得られるメリットがある一方で、配当金の税務上の扱いや株主優待の権利喪失、証券会社倒産時のリスクといったデメリットも存在します。
貸株サービスのデメリットは、証券会社が提供する自動取得設定や個別銘柄設定を活用することで、その多くを回避することができます。
自身の投資スタイルが、「値上がり益重視」か、あるいは「優待・配当重視」かを見極め、貸株サービスの内容を正しく理解した上で利用を判断することが求められます。
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