「日本はもう、終わっている」。
そう主張するのが世界三大投資家のひとり、ジム・ロジャーズ氏です。
「その手の話は聞き飽きたよ!」と海外投資家が定期的に投げてくる、いつもの悲観論だろうと一蹴したくなります。
ただ、円安が当たり前になり、老後資金や年金の話題が現実味を帯びてくると、「無視してもよいのか?」と引っかかりを覚えるのも事実です。
では、上記の言葉を繰り返し投げかける伝説の投資家は、何を根拠にここまで言い切るのでしょうか?
本記事では、4,200%という異常なリターンを叩き出した投資家ジム・ロジャーズ氏について、
- なぜジム・ロジャーズ氏は「日本終了」とまで言うのか
- それは感情論なのか、数字の話なのか
- なぜ今「銀(シルバー)」にこだわるのか
- 「逆神」「ポジショントーク」という評判は妥当なのか
を順番にほどいていきます。
ジム・ロジャーズ氏の言葉はかなり過激です。
ただし、中身まで空っぽというわけではありません。
盲信するのは危険ですが、笑って切り捨てるのも、たぶん違います。
資産防衛の材料として、都合よく使う。
その距離感が一番しっくりきます。
ジム・ロジャーズとは何者か?4200%のリターンと「冒険投資家」の素顔

日本批判ばかりが目立つせいで忘れられがちですが、そもそもジム・ロジャーズ氏は「実績のない評論家」ではありません。
むしろ、ウォール街のど真ん中で結果を出しきった人物です。
クォンタム・ファンドで築いた伝説的実績
ジム・ロジャーズ氏の名前を有名にしたのは、ジョージ・ソロス氏とのコンビです。
1970年代に設立したクォンタム・ファンドは、約10年で4,200%というリターンを記録しました。
この数字、冷静に見るとかなり異常です。
同時期のS&P500は数十%程度のリターンでした。
比べるのも失礼な差があります。
しかも「たまたま当たった」わけではない。
ジョージ・ソロス氏が勝負勘で踏み込むタイプだとすれば、ジム・ロジャーズ氏は地味な前提条件を1つずつ潰すタイプです。
派手さはないが、外しにくい。
少なくとも当時はそういう投資家でした。
そしてジム・ロジャーズ氏は、絶頂期の37歳であっさりと引退しました。
一生かかっても使い切れない富を手に入れ、ジム・ロジャーズ氏は「自由」を選んだのです。
冒険投資家という異色の経歴
37歳で第一線を退いたあと、ジム・ロジャーズ氏はバイクや車で世界を回ります。
正直、ここだけ聞くと「成功者の道楽」にも見えます。
ただ、ジム・ロジャーズ氏の場合は違います。
新興国の市場や農村の物価、港に積まれた資源を見て回るのは、次の投資判断のための下調べでした。
この辺りは何冊か書籍にもなっています。

「政府の発表する統計は嘘をつくが、現場のタクシー運転手は真実を知っている」。
これがジム・ロジャーズ氏の哲学、「現場主義(現地現物)」です。
数字の羅列ではなく、肌で感じた「変化」に投資する。
例えば、まだ誰も見向きもしなかった1980年代の中国奥地をバイクで走り、「これからは中国の時代が来る」といち早く予見したエピソードは有名です。
当時、共産主義の中国に投資するなど狂気の沙汰だと思われていましたが、結果はどうだったでしょうか。
推定資産額は10億ドル(約1,600億円弱)
ジム・ロジャーズ氏の資産額は非公開ですが、推定で10億ドル(約1,600億円弱)規模ともいわれます。
しかし、確かなことが1つあります。
ジム・ロジャーズ氏はもう、金のために働く必要など1ミリもないということです。
それでもジム・ロジャーズ氏が発言し、投資を続けるのは、知的好奇心と、世界の変化を読み解くことへの飽くなき探究心があるからなのでしょうね。
妻・家族・シンガポール移住の背景
ジム・ロジャーズ氏が妻のペイジ・パーカー氏と選んだ移住先はシンガポールでした。
理由は「21世紀はアジア」という、かなりストレートな発想です。
娘たちには中国語を学ばせ、日本ではなく、成長の中心に生活拠点を置いた。
口だけでアジア重視を語る人は多いですが、ここまで徹底すると、もはや思想ではなく実行です。
書籍(本)の著者としても活動
『冒険投資家』『大転換の時代』『日本への警告』など、ジム・ロジャーズ氏には著書が多数あります。
タイトルも煽り気味のものが多く、文章は投資本というより、辛口エッセイに近い印象です。

数字の話をしながら、比喩が多く、言い回しもかなり強い。
人によって好みがきっぱりと分かれる内容になっているかと思います。
ジム・ロジャーズはなぜ「日本終了」を語るのか
ジム・ロジャーズ氏は、実は大変な「親日家」としても知られています。
日本の食事を愛し、京都の文化を愛し、日本人の勤勉さを高く評価しています。
しかし、その愛する日本に対して、死刑宣告にも似た予測を下しているのはなぜでしょうか?
日本終了論の核心は人口と借金
少子高齢化について、ジム・ロジャーズ氏は容赦がありません。
「これは感情の話ではなく、数学だ」と切り捨てます。

確かに、子どもが増えなければ労働者も納税者も増えません。
この前提自体は否定しようがありません。
さらに、注目したいのが「債務対GDP比」です。
歴史的に見ても、かなり危険な水準です。
借金は誤魔化せても、人口は誤魔化せない。
この1点に関しては、反論が難しいのも事実です。
金融緩和と円の未来に対する見方
ジム・ロジャーズ氏は日本銀行(日銀)が行ってきた異次元の金融緩和を「狂気(Lunacy)」と呼び、激しく批判してきました。
「出口のない緩和は、いずれ通貨の価値を削る。その結果が終わりの見えない円安だ」。
ハイパーインフレという極端な未来は別としても、「気づいたら円の価値が下がっていた」という状況は、すでに起きています。
過激な発言は本心か?ポジショントークか?
「日本株は買わない」「日本から脱出せよ」。
こうした過激な発言に対し、市場関係者の間では常に疑念の声が上がります。
「これは自身を有利にするためのポジショントークではないか?」
確かにポジショントークの可能性もあります。
実際、ジム・ロジャーズ氏は過去に日本国債をショート(空売り)していました。
また、東日本大震災のときには底値で株を買い、高値で売り抜けるということもやっています。
このため、その発言にはポジショントークの面も含まれていると思われます。
日本株を売ったのは間違いだったと認める
頑固なジム・ロジャーズ氏ですが、過ちを認めることもあります。
2023年から2024年にかけての日本株の上昇局面において、「日本株を持っていなかったこと」、むしろ「売ってしまったこと」が機会損失であったと示唆しています。

ただし、注意が必要です。
間違いを認めたのは「タイミング」についてであり、「日本の構造的な欠陥」についての見方を変えたわけではありません。
株価が上がっても、円の価値が下がれば、ドル建てで見た日本の価値は目減りしているからです。
よって、日本への悲観的な見方は一貫しています。
ジム・ロジャーズが「銀」を買い続ける理由
ジム・ロジャーズ氏が推奨する投資対象は、流行りのAI関連株でもなければ、ビットコインのような暗号資産でもありません。
古いが、数千年の歴史を持つ確実な資産である「銀(シルバー)」です。
金(ゴールド)ではなく、なぜ銀か?
ジム・ロジャーズ氏は、「金はもう高すぎる」と言います。
ジム・ロジャーズ氏が注目するのは、金に比べて圧倒的に出遅れている「銀」です。
銀の価格は金に比べるとまだまだ安値です。
歴史的に見て、金と銀の価格比(金銀比価)はある一定の幅に収束する傾向があります。
今は、金に対して銀があまりにも安すぎる状態です。
いずれ銀が見直され、価格は跳ね上がり、金の上昇率に追いつく。
「誰も注目していない、割安なものを買う」
というジム・ロジャーズ氏の投資の鉄則に、今の銀は完璧に合致するのです。
さらに、銀は単なる貴金属ではありません。
太陽光パネルや電気自動車(EV)、半導体の製造に欠かせない「産業用金属」でもあります。
脱炭素社会が進めば進むほど、銀の需要は爆発的に増え、供給が追いつかなくなる。
これがジム・ロジャーズ氏の考えです。
銀は投資対象か、それとも保険か
ジム・ロジャーズ氏にとって銀は、儲け話というより保険に近いです。
世界恐慌から守るのにもっとも有効なのが銀や金だと、ジム・ロジャーズ氏は主張しています。

中央銀行や通貨を信用しきれない以上、 システムの外に資産を置くのは自然な判断です。
短期で結果を求めない点も、ジム・ロジャーズ氏らしいところでしょう。
ジム・ロジャーズの口コミ・評判
ジム・ロジャーズ氏の評価はかなり割れています。
信者に近い支持層がいる一方で、冷笑的な見方も根強いです。
アベノミクスの悪影響を予言していたと評価
高く評価されているのは、その「大局観(長期的な視点)」です。
アベノミクスが始まった2013年当初、世の中が株高に浮かれている中で、ジム・ロジャーズ氏は冷ややかにこう言っていました。
「これは日本を救うのではなく、借金を増やし、通貨を破壊して終わるだろう」。
それから10年以上経ちました。
現在の円安、止まらない物価高、実質賃金の低下を見れば、ジム・ロジャーズ氏の見立ては不幸にも的中したと言わざるを得ません。
ジム・ロジャーズ氏は目先の株価変動よりも先に、国の未来そのものを見ていたのです。
相場予想は当たらない・逆神と酷評
一方で、短期的な予想に関しては「当たらない」と評されることも事実です。
ネット上の投資フォーラムでは「ロジャーズが売れと言ったら買いだ」という「逆神」扱いを受けることもしばしばあります。
事実、短期的な予想は外れているケースが多いです。
そのため、トレーダーとしてジム・ロジャーズ氏のアドバイスに従うと、タイミングが早すぎて大火傷をすることもあります。
【まとめ】ジム・ロジャーズは予言者か、壊れた時計か?
ジム・ロジャーズ氏は未来を言い当てる占い師ではありません。
暴落の日時を当てる能力も、正直そこまで高くありません。
ただ、「人口減少」と「借金依存」の2つが日本の構造的問題であることは、 ジム・ロジャーズ氏が言わなくても変わらない事実です。
その言葉は予言ではなく「警告」です。
怖がるためではなく、考える材料として使う。
それくらいの距離感で接するのが、いちばん健全だと思います。
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