長期的な視点で投資を考えるときに、決して無視できないのが「国策」というキーワードであり、現代社会では「サイバーセキュリティ」が国策の1つといえます。
「国策に売りなし」という相場格言がある通り、国が予算を投じ、法整備を進めて後押しする分野には、中長期的に資金が流入し、関連する銘柄の売上や利益は増加する傾向にあります。
現在、日本政府が防衛費の増額を進めていますが、防衛といっても、それはミサイルや戦車といった物理的な装備品だけを指すのではありません。
現代の戦争において、陸・海・空・宇宙に続く「第5の戦場」と定義されている領域こそが、「サイバー空間」なのです。
昨今、企業や国家機関を狙ったサイバー攻撃は激化の一途をたどっています。
こうした背景から、株式市場において「サイバーセキュリティ銘柄」への注目度が急速に高まっています。
本記事では、日本の安全を守る国策テーマとしての「サイバーセキュリティ」に焦点を当て、市場の将来性や本命銘柄を徹底解説します。
なぜ今、株式市場はサイバーセキュリティに注目している?
サイバーセキュリティが脆弱であれば、どんなに優れたAI(人工知能)も、最先端の工場も、一瞬にして機能を停止させられてしまいます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が強力に進められる現代では、デジタル社会における安全を確保することこそが、経済活動の前提条件となっているのです。
ここでは、投資家がサイバーセキュリティ銘柄に注目すべき理由を2つの視点から説明します。
【理由1】サイバー攻撃の質が劇的に変化している
まず第1に直視しなければならないのは、サイバー攻撃の質が劇的に変化しているという現実です。
かつてのような愉快犯によるWebサイトの改ざんや単純なウイルス感染といったレベルの話ではありません。
現在主流となっているのは、国家の関与が疑われる組織的な諜報活動や、企業の存続を揺るがすランサムウェア(身代金要求型ウイルス)攻撃です。
攻撃者は脆弱なシステムを見つけ出し、そこから機密情報を盗み出し、巨額の身代金を要求します。
ここで重要なのは、これが単なる「ITトラブル」ではなく、「経済安全保障」の問題として捉えられている点です。
技術流出は日本の国際競争力の低下に直結しますし、電力や通信といった重要インフラがサイバー攻撃を受ければ、国民生活そのものが麻痺しかねません。
【理由2】日本政府による強力なバックアップ体制
サイバーセキュリティ銘柄に注目するべきもう1つの理由は、日本政府による強力なバックアップ体制です。
2025年5月には「サイバー対処能力強化法」が成立しました。
これまでの「専守防衛」的な発想から一歩踏み込み、未然に攻撃を防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた法整備が完了しています。
これは、民間企業任せだったサイバー対策に、国が前面に出て関与していくという大きなパラダイムシフトです。
当然、そこには巨額の国家予算が付随します。
公的なサイバーセキュリティ需要の拡大は、関連企業にとって大きなビジネスチャンスとなることは間違いありません。
アサヒグループHDが!アスクルが!日本のサイバーセキュリティは甘すぎる?
「日本企業はサイバーセキュリティ意識が低い」。
長らく指摘されてきたこの懸念が、残念ながら現実のものとなって露見しています。
2025年はアサヒグループホールディングス(HD)やアスクルといった、日本を代表する企業で大きな被害が発生しました。
2025年9月に発生したアサヒグループHDのランサムウェア攻撃被害のケースでは、システム障害によりビールの受発注や出荷業務に影響が出ただけでなく、実際に売上の減少に直結、さらに業界全体にまで混乱が波及しました。
また、2025年10月のアスクルに対する大規模なランサムウェア攻撃も事業停止のみならず、情報流出という深刻な爪痕を残しています。
これまでの日本企業には、「サイバーセキュリティ対策=コスト」と捉え、利益を生まない投資として後回しにする悪癖がありました。
しかし、一連の事件は対策の遅れが、株価暴落やブランド毀損という最悪のコストを招くことを証明してしまったのです。
「サイバーセキュリティにお金をかけない企業」は投資対象から外され、「サイバーセキュリティ対策を万全にし、あるいはそのソリューションを提供する企業」に資金が集まる。
この選別は今後さらに鮮明になっていくはずです。
日本企業の「甘さ」が露呈した今だからこそ、その隙間を埋めるサイバーセキュリティ銘柄の社会的重要性は高まる一方といえます。
【本命株を探せ!】日本を守るサイバーセキュリティ関連銘柄5選
サイバーセキュリティ市場は「国策」という強力な追い風を受け、長期的な成長トレンドに入ったといえます。
しかし、ひと口にサイバーセキュリティ銘柄といっても、その事業内容や成長ステージは千差万別です。
ここでは、日本のサイバー防衛を担う企業の中から、投資家として今こそ注目すべき「本命」と考えられる5銘柄を厳選して解説します。
KDDI(9433):携帯大手がサイバーセキュリティに本格参入
| 株価 | 2649.5円 |
| 時価総額 | 11兆957億円 |
| 配当利回り | 3.02% |
| PER(連) | 13.80倍 |
| PBR(連) | 2.03倍 |
| ROE(連) | 13.21% |

東証プライム上場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025年11月14日時点
まず、通信キャリア大手のKDDIです。
「なぜ通信会社がサイバーセキュリティの本命なのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
最大の注目ポイントは、2025年1月、TOBによりサイバーセキュリティ監視サービスで高い技術を持つ「ラック(LAC)」を子会社化し、グループ内に取り込んだ点です。
さらに、2025年5月にはNECと国内最大規模のサイバーセキュリティ事業を目指して協業することを発表しています。
企業がインターネットを利用する際、回線とセットで高度なサイバーセキュリティサービスを提供できるのは、通信キャリアならではの芸当といえるでしょう。
また、投資家目線では「連続増配」を続ける株主還元への意識の高さも魅力です。
ただし、巨大コングロマリットの一部であるため、サイバーセキュリティ事業の成長が株価にダイレクトに反映されにくいという点には注意が必要です。
トレンドマイクロ(4704):ウイルスバスターでおなじみ国内大手
| 株価 | 7,730円 |
| 時価総額 | 1兆891億円 |
| 配当利回り | ー |
| PER(連) | 33.66倍 |
| PBR(連) | 8.21倍 |
| ROE(連) | 20.89% |

東証プライム上場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025年11月14日時点
日本発のグローバル企業として世界中でその名を知られるのがトレンドマイクロです。
「ウイルスバスター」の知名度は高く、サイバーセキュリティ銘柄の筆頭格で、海外売上比率も高いグローバル銘柄といえます。
2025年には、AIの活用とグローバルパートナーとの連携で、事後対応型のサイバーセキュリティだけでなく、攻撃経路を予測し、サイバーセキュリティのニーズに合わせたリスク軽減策を実行する「プロアクティブセキュリティ」を推進する戦略を掲げています。
一方で、投資家として看過できないのが「競合との激しい競争」です。
米国発の新興勢力が台頭し、企業向け市場では激しい競争が起こっており、株価もレンジ相場が続いている印象です。
先行者メリットを活かし売上拡大を継続していけるかが、今後の株価のポイントでしょう。
FFRIセキュリティ(3692):純国産のサイバー技術者集団
| 株価 | 9,680円 |
| 時価総額 | 792億円 |
| 配当利回り | 0.14% |
| PER(連) | 107.08倍 |
| PBR(連) | 24.55倍 |
| ROE(連) | 27.65% |

東証グロース市場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025年11月14日時点
FFRIセキュリティは、「純国産」のサイバーセキュリティ技術者集団です。
サイバーセキュリティ技術の基礎研究やコンサルティング、サイバーセキュリティ対策ソフトの研究開発などの事業を行っています。
FFRIセキュリティの強みの1つに、日本の政府機関や重要インフラ企業からの信頼の厚さがあります。
海外製のサイバーセキュリティソフトには、開発国の政府がデータを閲覧できる「バックドア」が仕込まれているリスクが常に付きまといます。
経済安全保障の観点から「国産回帰」が進む中、FFRIセキュリティの独自技術は日本政府にとって重要な選択肢となり得ます。
時価総額もまだ中小型の部類に入るため、今後の成長期待が高い一方で、株式市場からの評価は割高な水準にあることが多い銘柄です。
決算で成長鈍化の兆しが見えれば、失望売りで急落するリスクには注意が必要です。
ソリトンシステムズ(3040):安全なクラウド利用に貢献
| 株価 | 1,847円 |
| 時価総額 | 364億円 |
| 配当利回り | 2.82% |
| PER(連) | 19.57倍 |
| PBR(連) | 2.76倍 |
| ROE(連) | 14.75% |

東証プライム上場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025年11月14日時点
ソリトンシステムズは、クラウド利用に必須の認証セキュリティやリモートアクセス技術において、高い技術を持つ企業です。
システムへ安全にアクセスするための「認証ソリューション」や、PCなどにログインする際にID・パスワード入力に加えて、顔認証や指紋認証、ICカード読み取りといった多要素認証を行うシステムなどを提供しています。
コロナ禍以降、急速に普及したリモートワークにおいて、ソリトンシステムズの技術のおかげで、安全な環境にて業務が行えている企業は数多くあります。
その高い技術力は、官公庁から地方自治体、学校、病院、民間企業まで幅広い顧客にサービスを提供していることからもわかります。
一方、技術力は高いソリトンシステムズですが、時価総額が300億~400億円の中小型株であるため、株式の出来高が少ないことがある点には注意が必要です。
HENNGE(4475):クラウドセキュリティ事業が好調
| 株価 | 1,305円 |
| 時価総額 | 424億円 |
| 配当利回り | 0.46% |
| PER(連) | 26.06倍 |
| PBR(連) | 11.05倍 |
| ROE(連) | 40.59% |

東証グロース市場
出所:Yahoo!ファイナンス 2025年11月14日時点
HENNGEは、SaaS認証基盤で国内において高水準のシェアを有するサイバーセキュリティ企業です。
HENNGEの主力サービス「HENNGE One」は、企業が利用する複数のクラウドサービスへのアクセスを一元管理できる優れものです。
さらに、誤送信・標的型攻撃など幅広いメールセキュリティにも対応したリモートワーク時代には重要なサイバーセキュリティサービスを提供しています。
従業員はパスワード管理の煩わしさから解放され、企業側はアクセス制限などでサイバーセキュリティレベルを格段に向上させることができます。
主力サービスの「HENNGE One」は年間契約かつ前払いを原則としているため、契約の増加とともに、安定的にキャッシュフローが積み上がるビジネス構造も評価すべき材料です。
ただし、高い成長期待からPERなどのバリュエーションが割高な水準で推移しがちで、市場全体の地合いが悪化すると大きく売られる場面も散見される点には注意が必要です。
サイバーセキュリティ銘柄へ投資する際の注意点と今後の見通し
ここまでサイバーセキュリティ関連の注目銘柄について解説してきましたが、投資家として冷静に押さえておくべき「リスク」についても触れておきましょう。
国策という強力な追い風が吹いているといっても、安易な飛びつき買いは怪我のもとです。
注意点①:テーマ買いの過熱感と業績のシビアな見極め
サイバーセキュリティ関連は、市場の注目度が非常に高いテーマ株です。
そのため、何か大きなサイバー攻撃のニュースや、政府の新たな方針が報じられると、実態以上に株価が急騰する「思惑買い」が発生しがちです。
短期的な値幅取りを狙うならそれも1つの戦略ですが、中長期投資を考えるなら話は別です。
PER(株価収益率)が異常に割高な水準まで買われている銘柄には警戒が必要です。
雰囲気だけで買うのではなく、しっかりと決算内容や指標などのデータを分析した上で投資を判断しましょう。
「売上高は伸びているか」「利益率は維持できているか」など、業績の裏付けがある銘柄を選ぶことが、高値づかみを避ける基本です。
注意点②:技術革新の速さと陳腐化リスクと終わらない競争
サイバーセキュリティ業界は、技術の進化スピードがとても速いです。
攻撃者側(ハッカー)の手口は日進月歩で進化しており、それに対抗する守る側の技術も常にアップデートを強いられます。
どれだけ優れた製品を持っていても、数年後には陳腐化して通用しなくなる可能性がゼロではありません。
さらに、ハッカーとの戦いに加えて、世界中のサイバーセキュリティ企業との技術競争も激化の一途です。
サイバーセキュリティが国策なのは、日本だけではありません。
世界中の企業との競争に敗れれば、あっという間に市場シェアを失う厳しさがある点も、この業界のリアルな側面なのです。
【まとめ】DX推進と表裏一体のサイバーセキュリティは長期の成長ストーリーで考える
本記事では日本を守る「国策」としてのサイバーセキュリティの注目銘柄を解説してきました。
デジタル化の波は、私たちの生活を便利にする一方で、新たな脅威も連れてきました。
DXが進めば進むほど、それを支えるサイバーセキュリティの重要性は幾何級数的に高まります。
言わば、DXとサイバーセキュリティは「車の両輪」であり、どちらか片方だけでは前に進むことができない運命共同体なのです。
政府が本腰を入れて対策に乗り出し、企業も生き残りをかけて予算を投じるこの流れは、今後10年単位で続く「長期的な成長ストーリー」といえるでしょう。
もちろん、記事の中で触れたように、過度な期待による高値づかみや技術の陳腐化リスクには注意が必要です。
しかし、リスクを正しく理解し、確かな技術力を持つ「本物」の企業(銘柄)を選別できれば、投資の成功につながる強力な味方になってくれるはずです。
※本記事内で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。


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